そもそも「ゲーム好き」でもなかったとか。

横山:子供の頃、「テトリス」のようなゲームで遊んだことはありますが、それぐらいでしたね。ゲームどころか、ネットもあまり得意じゃなかった。それだけに、ゲームの部署に移ってからは苦労も多く、分からないことは周囲の人を思いきり巻き込んで進んできました。“素人”だったことが、かえっていい効果を生んだということも、たくさんありました。

 例えば、「ガールフレンド(仮)」です。このゲームには、それまでのスマホゲームにはなかった“仕掛け”が多いと言われていますが、ゲームの世界を知らない私だったから、提案できたことも多かったのではと思います。

 分からないことがあればとことん聞いて、自分でできないことはどんどん人に頼む。これもなりたてホヤホヤの“素人プロデューサー”だったからできたことかもしれません。

 失敗も、もちろんたくさんしました。今回、この本を書いて改めて思ったのですが、失敗しても挫折はほとんどしていないんですね。発展途上だからこそ、「次にまた頑張ろう」と、前向きになれたんだと思います。

 どんな仕事でも、1人の力でできる仕事というものはほとんどありませんが、私の場合は特に、上司や同僚、チームのメンバー、他部署の先輩に至るまで、それからゲームユーザーの皆様に、育ててもらったところが大きい。本にまとめてみて、改めて感謝の気持ちでいっぱいになりました。

『フツーの女子社員が29歳で執行役員になるまで(仮)』を上梓されたきっかけは?

横山:執行役員に就任して間もない頃、この雑誌「日経ビジネスアソシエ」で取材されたことがきっかけです。まだまだ若輩者ですが、あまり知られていないスマホゲームの業界や、いわゆるIT業界の現場について、多くの方に知ってもらえればと思い、筆を執りました。

 もう1つは、働く同年代の方への“エール”になればと思って。

 藤田も言うように、女性は仕事を頑張りすぎてしまう傾向があると思うんです。

 執行役員になってから、女性の経営参画を推進する社内プロジェクトにも取り組んでいますが、現場の若手女性社員と話すと、仕事のことで手いっぱいで、「このうえ管理職になるなんて考えられない」という声が多いんですね。プロジェクトに取り組む中、「1人で抱え込み、頑張りすぎている女性」が少なくないということも痛感しました。

 ゲームの世界に飛び込んで、周囲の人に助けられながら、ヒットゲームのプロデューサーになれた。そんな経験が「1人でしょい込まないでいいからね」「頑張らないでいいからね」「自然体でいいからね」という、働く人へのメッセージになればうれしいです。