伊藤さんご自身も、現在、5社の社外取締役を務めていらっしゃいます。

伊藤:実際の経営に即してコーポレートガバナンス改革の提案や提言をするなら、欠かせない活動だと思っています。

 以前、8年間勤めた三菱商事の社外取締役時代に、こんな経験をしました。株主総会で株主の方が私をピンポイントで指名して「三菱商事のコーポレートガバナンスについて意見を聞きたい」と質問してきた。社外取締役が質問されることはあまりありませんし、あっても議長が他の取締役に振ることが多いものです。

 三菱商事には以前から社外取締役が5人もいますし、コーポレートガバナンスは優れています。そのとき、想定問答集もありませんでしたが、断る理由もないので、思っている通りのことをアドリブで7分程度、話しました。終わったら会場から拍手がわき起こりました(笑)。

 このケースで私が言いたいのは、今後、社外取締役が総会でこのように発言を求められることが増えるだろうということです。そうなると、社外取締役の対話能力も問われてきます。「あなたはこの会社のガバナンスをどう見ているのか」。ピンポイントで指名されても動じない社外取締役が必要になるのです。

社外取締役の能力、問われる時代に

そうなれば、コーポレートガバナンス改革も本物になりますね。

伊藤:「有名人だから」といった理由で、社外取締役を選んだりすると、総会で困ってしまう。非難の矢面に立ってしまうかもしれない。

 今回のオブ・ザ・イヤーでは、「(現在、着任している)社外取締役の能力」までは評価対象にしていません。さすがに、まだちょっと早いですよね。でも改革が徐々に進んでいって、何回か入れ替わりもあって、制度の運用が成熟してきたら、そういう評価軸も入れようという話になるかもしれない。

 改革の進捗とともに評価軸も変わっていく──。コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤーのメッセージ性とは、そんなものにしていきたいと思っています。

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