世界に通用するという点ではユニクロの商品の優位性はどこにありますか。

柳井:日本に生まれてよかったと思っています。日本人は忘れているんですけれど、日本は世界一の繊維の輸出国だったんです。品質のいいものがどこよりも安く世界に出ていった。

 トヨタの織機が生まれたのも繊維産業が確立していたからでしょう。繊維産業にはさまざまな技術が蓄積されています。トヨタが自動車を作るようになったのも織機を作っていたからですし、スズキだって元は織機製造業です。インドのタタ財閥は元々、綿紡績ですし、韓国のサムソンは第一毛織から出発している。どの会社も繊維技術をもとにして会社を大きく成長させていった。

 繊維産業は決して遅れた産業ではありません。液晶、グラスファイバー、炭素繊維…、先進的と言われる技術の根っこにあるのが繊維産業が作り出した技術です。その最先端を知っているのが日本人です。

 もうひとつの利点は客観性です。日本は着物文化だから洋服というものを客観的に評価して作ることができる。洋服の常識を疑いながら、本質を追求して製品にすることができる。アメリカやヨーロッパの人は洋服に対して、客観的に見ることは難しいでしょう。ファストファッションという業態を考え出すことはできても、ユニクロというカテゴリーを創出することはできなかった。

 僕らはいま、世界中でポジションを取るコンセプトを確立しました。

 世界初の洋服のグローバルカンパニーになる。「Made for All」世界の人々にライフウエアとしての服を提供するんです。

情報産業とサービス産業

柳井:僕は幸か不幸か、と言っちゃ孫(正義)さんに怒られるけれど、ソフトバンクの社外取締役を16年、やっているんです。孫さんの話を聞き、今は(日本電産会長兼社長の)永守(重信)さんの話も聞いています。世界の動きをもっともよく知っているふたりから情報を得ることができる。これからは情報革命というよりも、社会革命の時代になってきているんです。あらゆるものがコネクテッドされるから商品は変わってきます。

 もっともいいのはお客さまが注文した服が工場でたちどころにできて、それがすぐに送られてくること。すでに始まっていますが、僕らはそれをさらに進めていく。サイズも色も、その人が望んだものがすぐにできて、配達されてくる。ズボンのすそ上げなんてこともなくなるでしょう。洋服だけではありません。すべての商品が情報化によって、オーダーに変わる。それを実行できる会社とできない会社があるだけです。

実際に、トヨタの車はほぼオーダーです。車体の色、シートの色、販売店に行く前にインターネットで好みをオーダーして、工場はそれを組み立てる。

柳井:自動車でできることですから、あらゆる商品でも可能になる。そういう時代が来るのではなく、もう来ているんです。ソフトバンクの役員会に出ていると、情報化とサービスについての話ばかりです。あらゆる業種が情報業とサービス業になるといってもいい。

 だいたい、あらゆる業種の「際」がなくなっている。ユニクロもアマゾンやグーグルと競争しています。トヨタだって同じこと。テスラ、グーグル、アマゾン、ユニクロとの競争ですよ。

 トヨタは自動車を作るということではなく、自動車に乗る人にサービスする会社にならないと生き残っていけないのでは。僕らもトヨタもうかうかしてはいられない。

 今、アマゾンでもシャツを作って、売っています。アマゾンの商品はどんどん進歩して、良くなっていくでしょう。しかし、あくまで彼らはGMSです。あらゆる商品を売る会社です。ライフウエアに特化している私たちの方が最終的には強い。強いから勝てる。それくらい、うちは今、いいものを作っていると自負しています。