新しい人材発掘システムを発明した

シリコンバレーにはベンチャーファンド、ベンチャーキャピタルと呼ばれる組織が以前から数多くあった。YCの特色はどういうところだろう?

ユニス:われわれがオフィスを置いているパロアルトのサンドヒル・ロードにはセコイア・キャピタル、クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ(KPCB)、ドレイパー・フィッシャー・ジャーベットソン(DFJ)のような老舗からアンドリーセン・ホロウィッツのような新しいベンチャーキャピタルを含めて、数十億ドルを動かせるベンチャーキャピタルが何社も存在している。こうしたファンドはYCも含めて、機関投資家や富裕な個人から資金を募り、有望な未公開ベンチャー企業の株式を購入してハイリターンを求めるわけだ。

 われわれが伝統的なベンチャーキャピタルと違う点は、きわめて早い時点で優れたアイデアと優れた人材を発掘、投資するシステムを作ったところにある。

そういう仕組みはシリコンバレーにはなかったのか?

Yコンビネーター創設者のポール・グレアム氏

ユニス:結論を言えば存在しなかった。スタートアップ・インキュベーターという存在自体、YCの創業者、ポール・グレアムが“発明”したといっていいだろう。これは「ニワトリとタマゴ」問題がからむ。

どういうことだろう?

ユニス:有望なアイデアを持った起業家が、過去に実績を上げている大手ベンチャーキャピタルに集まってしまうという現象だ。実績がないベンチャーキャピタルにやって来るのは、不確実な投資先ばかりになってしまう。これではますます実績を挙げにくい。アンドリーセン・ホロウィッツを例外として、セコイアにせよKPCBにせよ有力ベンチャーキャピタルはすべて、シリコンバレーの創生時代から存在する古顔だ。新しいプレイヤーが入り込む余地はゼロに近かった。
 ここでシリコンバレーのベンチャー投資のエコシステム(産業の生態系)を少し説明してもいいだろうか?

 (ユニス氏は、ジェスチャーで空中に逆三角形を描いた。)

ユニス:これは大きなファンネル(漏斗)だと思ってほしい。このファンネルの上部には起業を望む無数のチームがある。いくつかのチームが起業に成功してファンネルに入る。会社が急成長し始めたときに資金を提供するのが伝統的ベンチャーキャピタルだ。「ラウンドA」「ラウンドB」…などと呼ばれて複数回の投資が行われる。ファンネルを下るにしたがって脱落が出て会社の数は減るが投資額は大きくなる傾向だ。最後に買収、新規上場によってファンネルから出る。

なるほど。それで買収や上場をエグジット(出口)と呼ぶわけか?

ユニス:そうだ。会社がエグジットに成功するとベンチャーキャピタルの利益が確定する。しかし(Yコンビネーター創業者の)ポール・グレアムはエグジットが発生するファンネルの底ではなく、上部に目を付けた。