サウジアラビアがイランとの断交を宣言した時、これまでのUAEの外交から見ると、サウジに追随してもおかしくはありませんでした。UAEは、イエメンで起きているイランとサウジの代理戦争にもサウジ側として積極的に参加しています。イランとの間には領土問題も抱えています。それでもUAEはイランとの外交関係を格下げするにとどめました。駐イラン大使を召還しているだけです。

イランが抱く中国への不信

資金調達に話を戻します。期待されるのは外国企業による投資ですね。

村上:そうです。しかし、すぐにバラ色の未来が訪れるわけではありません。イラン政府はV字回復するようなことを言っていますが、これは言い過ぎでしょう。

 確かに多くの外国企業がイランに進出したいと思っています。しかし、国際金融機関は長期的な返済能力がイランにあるかどうか確信を持てておらず、融資に慎重な姿勢を見せています。こうした機関が動き始めないと、大きな投資案件は成立しません。

 またイランが国内の体制を整備するのに時間もかかるでしょう。投資を受け入れるための法整備などが必要になります。

中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)がイランに融資することは考えられませんか。

村上:それは考えたことがありませんでした。近く、中国の習近平国家主席がイランを訪問します。その時に話題になるかもしれないですね。

 ただ、実はイランは中国に不信感を持っています。2009年以降に制裁が強化された時、日本もこれに倣いました。この結果、日本がアザデガン油田に持っていた権益が中国に移りました。中国は制裁に参加せず、イランから石油を購入し続けていましたから。しかし、こののちイランは中国を追い出してしまったのです。同油田の開発納期を守らないことが原因でした。この結果、同油田から外国企業はすべて姿を消すことになりました。よほど大きな不満を持ったのでしょう。したがってイランは、欧米や日本企業による投資を望んでいると思います。

第2次世界大戦時から続くドイツとの良好関係

石油と天然ガス以外の産業の先行きはどうでしょう。

村上:国際市場において競合に勝つことが期待できるものはあまりありません。外国企業の参入が増えるようになると、それらに喰われて国内産業が衰退する懸念もあります。もちろんイラン政府はそうならないよう考えつつ進めるのでしょうが。

中国のように、合弁企業の設立を条件に外国企業の参入を認めるのかもしれないですね。

村上:はい。確かに湾岸諸国の多くはそうした手法を採っています。

イランでは自動車産業が盛んなようですが。

村上:自動車の輸入が制限されていたので、自前で作っていたに過ぎません。自動車の部品でさえ輸入できなかったのですから。外国企業が支援するようになっても、海外市場で通用する自動車を10~20年で開発できるようになることはないと思います。

現在のイランの輸出の主力は石油化学製品です。

村上:外国企業の参入はまずはそこから始まるでしょう。製油プラントなどの整備がまだ十分に進んでいませんから。

 後は道路や高速鉄道といったインフラですね。特に需要があるのは発電所の建設だと思います。イランが産業立国を実現するのに電力が圧倒的に不足しています。核開発に力を入れる理由の1つは原子力発電の拡大でした。