トランプ氏、“象徴的な”大統領に?

トランプ氏はなぜ政治に興味を持ったのでしょう。

ダントニオ:彼はニューヨーク市の政治家に献金するような家庭で育ったのです。子供心に、世渡りには政治家の権力が必要だと分かっていました。政治に興味を持ったのは権力が欲しいからです。彼に純粋な政治課題や確固たる政治哲学があるからではありません。その証拠に彼は、ある時はリベラル、ある時は保守、またある時は無党派と、支持政党をころころと変えてきました。

 つまり彼にとっては、自分が成功しさえすれば、どの政党でもよかったわけです。これはとてもひどいことです。彼は「賞」を追求することが何より重要なわけですから。そして彼にとって、最大の「賞」が大統領の椅子だったのです。

トランプ氏はどんな大統領になると思いますか。

ダントニオ:これまでの彼の生き方を考えると、就任後に彼がまっとうな人間に変わることは、期待できません。政治でも、わずかな決断は彼自身が下すでしょうが、具体的な政策を実行する時には側近に権力を与えることになると思います。その意味では、英国の女王のような象徴的な存在になるのかもしれません。もちろん英国女王以上の意思決定権は持つでしょうが、象徴的な役割の方が大きくなると読んでいます。

トランプ政権の下で、米国はどんな未来図が描かれるのでしょう。

ダントニオ:彼は、未来図は描いていないと思います。描いているとすれば、彼が幼少期に目にした、米国が力を持っていた1950年代の過去の姿でしょう。

 当時、世界の50%の製造業が米国に集まり、大きな富が米国に集中していた。ほかの国々の産業は戦争で破壊されていたけれど、米国だけはリッチでパワフルな状態を維持していた。

 しかし現在は富とパワーは世界中に広く分配されています。トランプ氏はそれを受け入れられないのでしょうが、米国が50年代に戻ることは不可能です。それでもあえて後戻りしようとするなら、最終的に世界で大きな混乱が生じることになります。

 減税措置と赤字を生み出す財政出動で経済は活気づき、インフレが起こり、一時的には、経済が回復したように思えるかもしれません。けれど、それも長続きはしないと思います。彼が4年の任期を終えるまでには、たくさんの危機に見舞われることになるでしょう。

世界のリーダーは、トランプ氏にどう対応したらよいのでしょう。

ダントニオ:トランプ氏は一言で言えば、“Boy King”、つまり「少年王」なのです。歴史的に“Boy King”の周囲には、とてもパワフルな側近たちが集まります。そのため世界のリーダーたちは“Boy King”の発言は無視し、「トランプ内閣」にいる側近たちとやりとりをして最善を願うほかないのかもしれません。

 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。2016年の米大統領選直前、連載「もしもトランプが大統領になったら(通称:もしトラ)」でトランプ新大統領の誕生をいち早く予見した日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売中です。ぜひ手に取ってご覧ください。