兄の死が反面教師に?

母親や兄姉弟からも、影響を受けているのでしょうか。

ダントニオ:トランプ氏には、フレッド・ジュニア氏という兄がいました。兄はトランプ氏とは対照的に仕事がうまくいかず、42歳の時にアルコール依存症で亡くなりました。トランプ氏が兄について話すのは、人の心を動かせるからでしょう。これも彼の人心操作の一つなのです。

 確かに兄の死は悲劇的でしたが、彼が兄の死を悼んでいるのかは疑問です。むしろ兄のことを敗者だと感じ、自分はああなりたくないと反面教師にしているようです。彼は兄の死の前から、兄とは違う生き方をすると宣言していましたが、兄の死はそれを再確認させ、彼にこれまでの生き方を続けるようしむけたのです。

 母のメアリー氏は、トランプの女性観に多大な影響を与えたと思います。母は病弱で、彼が軍隊学校に入学した13歳の頃からは別々に暮らしていました。母から十分に得られなかった愛を、彼は女性に求めるようになったのだと思います。

 しかし彼は、女性を複雑な人間であるとは考えておらず、自分が求めるものを与えてくれる存在だと考えています。ですから女性と成熟した関係を築くことができません。そのため何度も離婚を繰り返すことになったのです。

 同じことは、子供たちとの関係についても言えるでしょう。彼は、子供たちが小さな時分は、あまり彼らに興味を示しませんでした。妻に育児を任せて、働いていればハッピーだったのです。子供たちが大人になって初めて、良い関係が築けるようになった。そんなところも、彼の未熟さの現れだと思います。

何度破産しても苦しまなかった

彼の人格は、ビジネスには、どのような影響を与えたのでしょう。

ダントニオ:彼は何度も破産していますが、面白いのは、彼自身は一度も苦しんでいないということです。ビジネスで失敗すると逃げて、ほかの人に責任を負わせてきました。

 例えば彼は、メキシコのある半島に大きなリゾート住宅を作ろうとしたのですが、結局開発できず、頭金を払った人々は大損しました。この時もトランプは、「自分の責任ではない」と逃げました。彼が創設した不動産セミナー「トランプ大学」でも、彼は特別なことが学べると宣伝して学生に多額の授業料を求めましたが、蓋を開けてみれば、公立図書館で無料で得られるようなレベルの内容でした。

 問題は、こういう悪事をやってのけても、全く反省しないことです。彼にはとても強いナルシシズムがあるのでしょう。もちろん政治家は、多かれ少なかれナルシシズムを持っているものです。しかし通常ならば同時に、「過ちは恥ずべきことだ」と反省する能力も持ち合わせている。

 けれどトランプ氏に「恥だ」と思わせることは難しい。彼はどんなことが暴露されようとも、責任を感じて自分のやり方を変えるようなことはないですから。