「これからは国民のために」と語ったトランプ氏

富裕層のトランプ氏に、国民感情を理解できるのでしょうか。

フィッシャー:難しいでしょうね。私も疑問に感じて、彼に聞いたのです。「あなたは長い間、競争相手を傷つけたり、建設業者から訴えられたりしてきました。あなたの成功の陰にはたくさんの傷ついた人たちがいるのです」と。するとトランプ氏は、「私はこれまですべて、“ドナルド・トランプ”のためにやってきた」と説明しました。

 「では、どうやって3億人の国民の代表になるのでしょう」と問うと、こう答えたんです。「変わらなければならないな。“ドナルド・トランプ”のためにしてきたことを、これからは国民のためにするよ」。彼は、自分が変われると純粋に信じているようでした。

 しかし、これまでの彼のビジネス人生を見ると、本当に変わることができるのかは疑問です。金銭面においても振る舞いにおいても、彼はこれまで、自分以外の人々の利益にかなうよう思いやったり、自ら進んで犠牲になったりするようなことをしてこなかった。そんな彼が、自分の人気を犠牲にしてまで、国民の将来のためになるステップを踏むでしょうか。それを考えると、彼にとっては大統領という職務は全く新しい挑戦になるでしょう。

トランプ氏に世界のリーダーはどう対処すればいいのでしょう。

フィッシャー:世界のリーダーにとっても、対処の難しい存在になるでしょうね。リーダーの中には、彼のビジネスの良いパトロンになることで、優位に立とうとしている人も出てきています。明らかに利益相反が生じている。

 繰り返しますが、トランプ氏は報告書を読みません。個人的な面談やテレビなどを通した口述情報を重視するタイプなので、トランプ氏にアピールするために必死にメディアに出るリーダーもいます。そういう意味では、日本の安倍首相が真っ先に面会に駆けつけたのは、賢明な判断だったと言えるでしょう。

 今後も、面談を通してトランプ氏との関係を構築しようとするリーダーは、アドバンテージが得られると思います。

 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。2016年の米大統領選直前、連載「もしもトランプが大統領になったら(通称:もしトラ)」でトランプ新大統領の誕生をいち早く予見した日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売されました。ぜひ手に取ってご覧ください。