うーん、もったいないですね。

岩崎:長時間労働で一過性の売り上げは得られるけど、企業の持続的成長はない。そこで、早く帰れる会社にしたいと社長に話しましたが、「残業しないと売り上げが落ちる。辞めたら社員はまた採用すればいい」と。

 取締役の私も、子供を1人産んだら戦力外になる。女性は子供を産もうかなと思うだけで、やりがいのある仕事を捨てないといけないのかと。

女性が辞めない会社を作る

日本でも結婚、出産とキャリアを両立できる会社が、ずいぶん増えてきたという印象はありますが。

岩崎:私もいろいろな方に話を聞きますが、まだまだですね。制度はありますよ。でも、バリバリの営業の女性が出産で人事部付になり、戻るときに違う部署に配属されるでしょう。同じ職場に戻っても、そこが長時間労働だと、時短社員に責任ある仕事を任せません。働いているだけ、辞めなくていいだけで、やりがいはないんです。

そこで、自分で起業することにしたわけですか。

岩崎:社員が何人でも子供を産めて、やりがいを持って働ける会社にしたいと。もともと、いつか起業したいとは思っていました。当時、毎日深夜まで働いていたせいで肌がボロボロだったのが悩みだったんです。そこで納得できる化粧品を作ろうと思いました。

「言うは易く」ですが、実際に起業するのは大変ですよね。

岩崎:化粧品会社に勤めたこともないですしね。化粧品のハコの裏に載っている製造会社に片端から電話して研究者の方にアポを取りました。「日本一女性がきれいになる化粧品を。無添加で奥様、お母様に使ってもらいたいと思うようなものを作りましょう」と話して回ったのですが、まともに聞いてくれる人がなかなかいませんでした。

 そんな時、アトピー用石鹸会社の研究者が「一緒に作る」と言ってくれました。私は素人だったので「肌にやさしい美容液で化粧を落とせないかな」と。研究者としては「そんなのできるわけないじゃん」という感じなんですけど(笑)。でも試行錯誤し、2006年に発売したのが、今も一番売れている「ホットクレンジングゲル」です。累計で490万本、約38億円を売り上げました。

ヒット製品が出て忙しくなれば、長時間労働に傾きがちですよね。

岩崎:そうなりにくいよう通販に特化して、製品力と企画、広告に注力しました。営業力ではなく、仕組みで売り上げを伸ばしていく考え方だったんです。でも、おっしゃるとおり、忙しくなると残業が増えやすいです。まだ子供がいる社員はいなかったので、みんな1時間ぐらい残業していましたね。

 運が良かったのは、41歳の時に私が会社の第1号で出産したことです。3~4カ月で復帰したのですが、会社のシステムにトラブルがあって、夜8~9時まで残業していた時期だったんです。

 保育園のお迎えは7時半まで。社員をおいて迎えに行くと、自分の子供が最後です。子供とも向き合えない。掃除できる時間もないので家の中もめちゃくちゃ。仕事も中途半端。自分が納得してやり切れる場所がないんです。

 誰からも褒められないし、鬱になっていきますよね。私の後に産む人も、こんな嫌な思いするんだと知って、残業を禁止しました。残業が一番、労働時間に差がつく原因ですので。それでも6時半ぐらいまで残ったりしていたんですが、東日本大震災でサマータイムを導入したことで変わりました。

 就業時間を30分前倒しし、午前8時半から午後5時半までに。女性が多いこともあり、夜道は暗いし仕事が終われば5時で帰っていいと言ったら、皆、震災不安で5時にピタッと帰りました。

 3カ月ぐらいして、「8時半~5時半に戻しましょう」と言ったんです。そうしたら、社員が「いや5時で」と。30分を1年にすると約1カ月分の給料です。じゃあ7.5時間の給料に減らしていいかというと、それはダメなんですね(笑)。

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