小田嶋:銀行なんかだと、一番出世のやつが役員になると、あとの全員が出向になる。下手すると40代半ばで、余生を決められてしまう。
岡:官僚なんかは、その最たるものだよね。同期から事務次官が出たら、あとの人たちは辞めざるを得なくなる。
小田嶋:一番出世以外の二番から下が全部、上に残らなくなるというあれは、一も二もなく、自分より年上のやつに指示できないという、不思議な心理の上に構築されたシステムだよね。これがメーカー系なんかだと、自分より3つ下のやつが有能で、自分の上司だ、なんていうことは結構あり得る話になっていて、受け入れられている。頭脳労働というか、虚業というか、エリートほど、そういう現実が受け入れられない。
岡:電通は受け入れているよ。部長と部下が2~3年ひっくり返っていることは普通になっていて、それはみんな耐えている。でも、60歳を過ぎた人が3分の1の年収で同じ社内にいるというのは、社内的にも本人的にもきつい。
そりゃ家にいてもしょうがないけど……
ただ、高齢化社会が進む中で、これからはその状態が普通になっていくんじゃないですか。
岡:でもさ、それってどうなの? 俺だったら、できないよ。3分の1の年収で経理とかをやれって言われても。
岡さんは数字が苦手ですものね。
岡:いや、技能の話じゃなくて、心理の話をしているの。
でも、定年後のその状況を受け入れている人は、その人の理由があるわけでしょう。収入の話だけじゃなくて、家に帰りたくない、ということもあるかもしれないじゃないですか。
岡:うん。まあ、家にいてもね……。
しょうがないでしょう。
小田嶋:だから、妙なエリート意識を持ってしまうと、その先が難しくなる。これが再雇用じゃなくて、再就職だとなると、もっとややこしくなるよ。だって、何か面接みたいなものを受けなくちゃいけなくなるから。
岡:そうだよ。「何ができますか?」って聞かれて、「電通の部長ができます」みたいなことを言って、「ああ、何もできないんですね」となってしまう。言う方もイヤだし、言われる方はもっとつらい。
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