:そうすると、定年後に働く理由がない。しかも、定年後は10年も生きないんだから、再雇用の制度には誰も応募してこない。しかし、今はそこに応募が殺到して、倍率が上がってしまっていると聞きました。

小田嶋:マジか。

:今は、定年になったほぼ全員が、「はい」って手を挙げちゃう。

小田嶋:ということは、会社としては、年金を払わなくてよくなって、なおかつ低賃金で経験のあるやつを確保できて、と、やっぱりウィン・ウィンみたいな話になっている。

「経験知」なんて人事には邪魔なんです

:ある種、そうなっているかもしれない。でも、小田嶋は「経験のある」と言ったけれど、そこは違うんだよ。というのは、再雇用のときは、営業のやつを総務に、総務のやつをクリエーティブに、という具合に、昔の部署とは違う部署に行くように采配しているの。受け入れる部署にしたら、畑違いの人が来るわけだから、結局、みんなよく分からなくなっている。

 なぜわざわざ専門外にするんでしょうか。

小田嶋:歳を取っていて、ある程度の経験はあるんだけれど、肩書がない、という人がいると、現場では確かにやりにくいからね。

:その部署の専門的な技能がない人も困るし、経験があって先輩風を吹かせる年寄りも、そりゃ、やりにくい人ですよ。

小田嶋:俺らが受け入れ部署だったら、煙たいよね。

:だから、部署をずらすという人事のワザが編み出されるわけ。でもさ、クリエーティブが経理とかに行っちゃっても、やっぱり、これはこれで何も分からなくてさ(笑)。

小田嶋:この一連の話の根っこには、日本人の地位に対する了見の、あまりにも狭いところが凝縮されていると思うんだよね。この間、日経ビジネスオンラインの連載から本になった『スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』(田中信彦・著)を読んで、俺はとても面白いな、と思ったんだけど(小田嶋さんがこの本に触れたコラムはこちら)。

日本人と中国人の思考、価値観の違いを「スジを重視する日本人」「量を重視する中国人」という観点から整理されていましたね。

小田嶋:要するに、中国人の基準は「量」だから、「年齢がいくつであれ、仕事があれば金がもらえるでしょ。だったら、働けばいいじゃん」といった考え方を、すっと取る。

:言われてみれば、そうなんだけどね。

小田嶋:そういうところは現実的で柔軟なんだよ。でも、日本人はそう考えないから、自分より2期下のやつが自分の上司だということに、心理的に耐えられない。

:そういうところの懐は浅い。

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