大学への転職は“魔が差した”?

ヤナセ:その感覚は、岡さんより一回り下の、僕の世代にもまだ残っています。僕が大学に転職したら、給料が減っちゃったけど、両親は喜んでいました(笑)。

小田嶋:うちの親父はもう亡くなっているから、よく考えると、喜ぶ人はいなかったんだけど(笑)。

:小田嶋のおふくろさんは、そういうところで喜ぶ人じゃないからね。

小田嶋:無責任な親戚は喜ぶけど、おふくろは、「何、ばかなことを言ってるの」てなぐらいの人だからね。

:健全なんだよ。

ところで、柳瀬さんはどうして転職を決意したんですか。

ヤナセ:いや、あの、えーと、魔が差した、というか(笑)。

:しどろもどろじゃないか。

ヤナセ:いや、魔が差したんだけど、正直に言うと、ファイナル編第1回の岡さんの話と一緒です。

 要は誰もルールがまったく分からない、50代の会社員サバイバルゲームの中で、どういう風にこのあがきの沼の中から抜け出せるか、と苦しんでいたところに、一番きれいな玉が突然投げられて、それを打ち返したら、こうなった。超ざっくりに言うと、そういうことです。

:柳瀬さんは何歳?

ヤナセ:54歳です。大学の話をいただいたときは53歳でした。

:まあ、いいと思うよ。55歳を超えると、体力がなくなるから、もう動けなくなる。

小田嶋:55歳を超えると、受け入れ側としても、「拾ってやった」みたいな話になっちゃうでしょう。そうなると、パワーバランスの主客が変わってくる。

:だって、昔の定年は55歳だったんだよ。それが今は、そこから、また新しく仕事を始めなければならなくなっている。世の中が、いつの間にか、わけの分からないものになっている。

「100歳社会」という、恐ろしい言葉が流行したおかげですね。

:振り返ってみると、昔の会社にも定年後の再雇用はあった。電通にだって昔からあったんだよ。ただ昔は、それに応募するやつは少なかった。というのは、広告業界は寿命が短くて、早死にが多かったというのが一つあって。

小田嶋:激務で。

:激務というか、正確に言うと「激飲み」だよね。それに加えて、悪いこと、いい加減なことも含めて、昔は社員に金があった。みんな勤めているときに家を建てて、老後の蓄財にも、ある程度成功していた。

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