小田嶋:日本のお笑いの世界でも、40代だと若手だからね、という話があるじゃないか。

:いまだに、明石家さんま、タモリ、ビートたけしがビッグ3といわれているものね。新陳代謝がどれだけないか、ということだけど。

小田嶋:タモリは今年72歳、ビートたけしが70歳、一番若いさんまで62歳。

:サザンの桑田佳祐さんだって61歳ぐらいでしょう。

小田嶋:昔は熟女といえば、25歳以上が相場だったのが、今は50歳、60歳とかになっているという。

どんだけ昔のことよ。っていうか、熟女ってなによ。

小田嶋:いや、あの、その……。

:会社という組織を辞めちゃうと、新入社員から始まる部下の連なりもない。こうして同級生の小田嶋とばか話を続けていると、2人とも同じように年を取っているから、自分が客観的にどれだけ年を取ったかが分からない。

いつまでたっても、大人になれなくて、困りましたねえ。

小田嶋:その前に、広告とか出版とか音楽とか、いわゆるコンテンツ系の仕事は、若者のやる仕事じゃなくなっている、ということはあるよ。

:そうね、広告の業界団体なんかに行くと、もうみんな、年がものすごいことになっているよ。平均年齢が70歳以上だから。僕はこの間、そこのお偉いさんに、「若者はこうじゃなきゃだめだ」みたいな説教をされて、「いや、僕は60歳を過ぎています」と答えたんだけど、「そうか。君、誰だっけ?」だって。

うっ。

:若干、ぼけが入ってきているけれど、そんな風に70代がいまだに現役のように幅を利かせている。

自らも含めて、年寄り文化人が叩かれる理由

小田嶋:今の20代、30代が、年寄りの文化人に対して、「お前ら、どけ」という気持ちを持つのは、よく分かるよね。

そこは分かっているんですね。

小田嶋:うん。

その対象には、小田嶋さんも入っているんですよね。

小田嶋:というか、先日、内田樹氏が、合気道の大会か何かでイタリアに行って、うまいものを食ったとか、ワインがどうだとか、そういったお気楽ツイートを流していたんだよ。で、「イタリアの人たちはみんなゆるくていい、これで生産性が日本より高いんだから、考えさせられる」みたいなことを発信したら、何人かの若いやつから、猛烈な反発が起きていた。

:なんで? ただのツイートでしょう。

小田嶋:どういう反発かというと、内田氏ご自身は、豪邸を建てて、日本ではウナギを食っていて、ブルジョワなくせに、「イタリアの若いやつらは生産性が高くていい」とは、何て醜悪ないい方なんだ、と。あと、「イタリアは日本より貧困の若者が多いぞ」とか。

:まあ、ごもっともだけど。

小田嶋:でも、たかが旅行先から発信したお気楽なツイートなわけでしょ。俺はこの程度のことで何で怒るのかよく分からなかった。ただ、憎悪が溜まっているということは感じる。年寄りが気楽な感じでいるのが、許せないんだよ。

:じゃあ、俺たちも危ないじゃないか。

小田嶋:もちろん危ない。ただ、なぜ内田氏がそこまで言われるのかというと、どこかの場面で「脱成長」みたいなお話を提唱しているから、ということもある。

:「脱成長」って、言葉通りにとらえれば、成長の先にあるものを探そうよ、ということだと思うけど。

小田嶋:そう。否定じゃないんだよ。「成長なんかしなくていい、みんな貧乏になればいい」、と言っているわけじゃあ全然ない。国の政策の第一の目標を、戦後みたいな成長に置くんじゃなくて、その前に公平な分配とか、いろいろやることがあるでしょう、ですから社会の原理を、今の時代に合わせて変えていきましょう、ということを言っておられる。と、俺は解釈しているんだけど。

:まったく正しいんじゃないの?

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