(聞き手:清野 由美、前回はこちら)
――久々に再開した「人生の諸問題」。少しお休みしている間に、お二人とも順調に年を重ねたことと思います。

写真右:岡 康道(おか・やすみち)1956年生まれ。佐賀県嬉野市出身。80年早稲田大学法学部卒。同年、電通に営業として入社。85年にクリエーティブ局へ異動。99年7月クリエーティブエージェンシー「TUGBOAT」を設立。2004年 NYADC審査委員を務める。東京コピーライターズクラブ会員。NY ADC会員。LONDON D&AD会員。主なCM作品として、NTTドコモ、NTT東日本、サッポロビール、大和ハウス、キヤノン、富士ゼロックス、富士フイルムなど数々の企業ブランドキャンペーンを手掛ける
小田嶋:人生初めて還暦超えをしましたね。
この組み合わせで。
岡:そうね。誰と組んだって初めてだけど、今年、61歳ですよ。
「人生の諸問題」を始めようといっていたとき、お2人はぎりぎり40代だったんですね。

岡:こんなに若かったの!?
小田嶋:そんなばりばりだったのか。
俺たち、50歳になっちゃうよ、とかおっしゃっていました。
小田嶋:信じられない。
岡:俺たち、60歳を超えちゃったのか。でも、あんまり変わってないね(笑)。
はい、変わっていません。内容は。
小田嶋:いや、最近、なんか以前とは違う景色を感じるようになっているな、とは思っていたんだよ。
岡さんは、自分が60歳になったとき、まだ最前線で広告を作っていることを考えていましたか。
岡:思っていなかったです。
小田嶋さんは、コラムをがんがん書いているって、予想していましたか。
小田嶋:全然思ってなかった。
世代ごと持ち上がって老いていく…
岡:広告屋の仕事って、電通にいる限りは、若者の仕事だったわけですよ。日本ではずーっと、ターゲットが若者でしたからね。会社では、「40歳になったら、床の間を背負え」みたいにいわれて、管理の方に回っていく。ですから、広告は若い人の仕事だ、という感じは意識の中に刷り込まれているわけです。
小田嶋:前世紀までは、確かにそうだったろうね。
岡:僕は、現場を離れて、部長とかになることが、自分としては難しくて、会社を辞めちゃったけれども、辞めたときは、一体いつまで自分はできるんだろう、とは思っていました。5年持てばいいかな、と。でも、辞めてからもう18年経ちましたが、別にあまり変わらない。だから、あれ、何でだろう?
自分でもよく分かっていない。
小田嶋:広告は若い人たちが作るものだという意識は、昔はあったけれど、今は、若者のやることを、年寄りがやっていても、変じゃなくなってきているよね。
岡:そう。みんな年寄りになっても、そのまま広告にかかわっている。
小田嶋:ロック・ミュージックが同じで、ローリング・ストーンズのミック・ジャガー(74)は若いころに、「60代になってロックなんてやってられないよ」みたいなことをいっていましたが、70代の今も、まだばりばりやっています(笑)。
岡:確かに(笑)。
小田嶋:ラスベガスでメジャーなステージの観客動員トップが、いまだにロッド・スチュワート(72)で、ベストテンに入っているのも、軒並み70歳代のミュージシャンです。で、客は60代が中心でしょう。
岡:結局、マーケットの塊とともに、ということなんだろうけど。
小田嶋:若い、若くないを云々する前に、マーケットごと、そのままずんずんと高齢化してきている。ということは、「若者」を意味する感覚というのも、一緒に上がってきている。
岡:わけが分からない。
小田嶋:たとえばスティングが今年66歳だといわれると、「まだそんなに若いの?」という気になるだろう。
岡:若手ですね、全然(笑)。
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