小田嶋:たとえば陸上の為末大さんとかは、物の言い方とか考え方とかが、すごくクレバーな人でしょう。日本の典型的なスポーツマンというよりは、ビジネスマンっぽいですよね。
岡:MBAの学校の人みたい。
小田嶋:あと、陸上では朝原宜治さん(2008年北京オリンピック・陸上男子4x100mリレーの銀メダリスト)や、青山学院大学の駅伝チームの原晋監督もそうだよ。陸上は、自分で自分を追い込むマインドセッティングができないとだめで、要するに賢くないと上には行けない部分があると思う。
ちなみに、その反対にはどんな人がいますか。
小田嶋:野球には●本さんみたいな方がいるでしょう。
岡:大きな声ではいえないけれど(笑)。
小田嶋:野球の人って、おおかたそうじゃん、と思いますね。
岡:中●さんとか(笑)。
小田嶋:古典的なところでいうと、長嶋茂雄が大学時代に、監督から受けた「月夜の千本ノック」とかね。「月の光だけで打て」というのは、ミスターがらみの話だから面白いけれど、大リーガーにそんなことを話しても、「What?」ですよ。
岡:日本の野球選手だと、監督になぐられた思い出とか、みんな喜んでしちゃうよね。
小田嶋:やっぱり団体競技ということもあり、野球は若干そういう部分がないと、おそらくチームスポーツとしてやっていけないんでしょう。
官僚の残業には“寛容”な国民
そもそもの話題である、電通および日本の会社の過重労働の問題に戻りますと、厚労省が問題視した電通の残業量は、当の厚労省自身には向けられないんですか。
小田嶋:よそを摘発していながら、役所も相当ひどいよね。
岡:全然ひどいよ。
小田嶋:深夜の霞が関は、どのビルも灯りがこうこうと灯っている。
残業の本丸ですよね。
岡:ただ確か、官僚、国家公務員というものは、利益のために働いてはいない、ということで、労働基準監督法の対象にならないんじゃないのかな?(※注:例外はありますが、基本的に国家公務員法が労働基準法に優先します)
小田嶋:法律的な何かがあるのかもしれない。けれども、官僚が残業することについて、国民自体がまず、そんなに非難しないでしょう。
岡:そこでは世論が形成されない。
小田嶋:官僚と学校の先生に対して、世の中はわりと冷たいんですよ。むしろ、早く帰ると世間から怒られる、ぐらいなもんで。地方の市役所あたりでは、「あいつらは5時になると、クモの子を散らすように退庁して、役所前の飲み屋は6時前に満員になる」なーんて陰口がよくいわれていたよね。
岡:汗水たらして残業している民間の人間から言わせてもらえば、「ふざけるな」だと。
小田嶋:ともかく、だから、中央のキャリア官僚に関していえば、そんな早く帰ってはいけないんだよ。実際、早く帰っている人はあまりいないと思うけど。
岡:いない。それで、離婚率が非常に高い…と聞いている。
そこは民間の広告代理店と似ています。
岡:でも、どんなに労働環境が劣悪だとしても、キャリア官僚の人たちには、「俺たちが日本を支えているんだ」という、不思議な自意識というものがあるでしょう。
小田嶋:俺が20代のころに行っていた四谷のスナックは、通産省(当時)の人がすごく来ていたんだけど、来る時刻はそれこそ夜の11時ぐらいで、すごい勢いで飲んで帰っていくんだよ。
岡:役所に?
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