(聞き手:清野 由美、前回はこちら)
岡:前回は小池百合子さんが俎上に上がったけれど、僕は「菅義偉」という人がよく分からない。
小田嶋:ああ、官房長官。実は俺、あの人に関して、当初はすごく期待していたんだよ。だから、やっぱり俺は人を見る目がないな、と我ながら反省しているんだけど(笑)。

写真右:岡 康道(おか・やすみち)1956年生まれ。佐賀県嬉野市出身。80年早稲田大学法学部卒。同年、電通に営業として入社。85年にクリエーティブ局へ異動。99年7月クリエーティブエージェンシー「TUGBOAT」を設立。2004年 NYADC審査委員を務める。東京コピーライターズクラブ会員。NY ADC会員。LONDON D&AD会員。主なCM作品として、NTTドコモ、NTT東日本、サッポロビール、大和ハウス、キヤノン、富士ゼロックス、富士フイルムなど数々の企業ブランドキャンペーンを手掛ける。
岡:あの人、政治家には珍しく、うんざりした顔の人でしょう。しゃべり方が、いつも、もごもごしていてさ。
小田嶋:そうそう。たたき上げで、うんざり感のある人で、くさくさした表情で、嫌々しゃべっている……という感じが、官房長官として登場した当初は新鮮だったのよ。
岡:あのうんざり顔は、サッカーのおかちゃん(岡田武史氏)に通じるよね。
小田嶋:結構、おかちゃんに近かった。それで、あの、うんざりした感じの人が安倍さんの後ろに付いて、古株連中に「いや、安倍ちゃんはこういっているけど、私はこう思うんですよ」みたいなサポートをしたら、真実味があるかもしれない、ということは、なかなかうまい人を選んできたものだ……と、思ったんだけど、やっぱりだんだんひどいことになっちゃいましたね。
岡:前川(喜平・前文科省事務次官)さんの人格攻撃をしたあたりから、急速におかしくなっていった。
小田嶋:結局、感情が出ちゃったんですかね。最後の最後のところで、「うるさい、黙れ」みたいな感じになっちゃったでしょう。ああいう、くさくさした持ち味の人は、感情を出しちゃだめなんですよ。
岡:それで、トランプはどうなの。
小田嶋:いきなりそこか。
岡:トランプは菅さんよりも、いまだにもっとよく分からない。まさかこんなやつが、アメリカの大統領にはならないだろうと思っていたら、なっちゃったじゃないか。
分かることでいうと、トランプ問題って、結局のところ、既存の政治家が嫌われた、ということだよね。ハーバードとか、ロースクールとかを出て、弁護士になって、そこから政治家になりました、といったエスタブリッシュメント・コースの人材を、嫌悪する空気が表に出てきた。
小田嶋:その流れはイギリスでも、フランスでもある程度そうだし、東京都議選で「都民ファーストの会」が大勝ちしちゃったという状況も、それに近いと思うよ。
岡:もはやプロの政治家は信用ならないと、みんなが思っているわけだよね。
小田嶋:都民ファーストが素晴らしいことをやるかどうかは置いておいて、ともかく自民党のあいつらは嫌だ、と。
岡:民進党はもっと嫌だ、と。
決まり文句で押し切る強さ
小田嶋:そうしたら小池さんが素人をたくさん集めていた、と。何だか分からないけれども、こっちに入れちゃえ、みたいなことですよね。怖いですよ。
岡:政治のレベルとしては、相当低いと思う。
小田嶋:しかも、都議会選に大量当選したその日に、小池さんは党首を辞めて、次に彼女が指名した党首が、議員でもない野田数、という人。ということで、その野田氏の経歴を当たってみたら、結構とんでもない人なのよ。
岡:そうなの?
小田嶋:よりにもよって、ちょっとやばいネトウヨ系の匂いがプンプンで。
岡:まじで?
小田嶋:何しろ、都議会議員時代に、「日本国憲法は無効で、大日本帝国憲法が現存する」との請願に賛成票を投じた人間ですからね。
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