小田嶋:そういう中でも、何だか知らないけれど全能感を持って、高校生活を満喫している風なタイプがいる。当時の森田健作あたりが出ていた学園ドラマの中にいるような雰囲気をまとって。

「おれは男だ!」系ですね。

:そういうやつは、うっとおしいんだよ。うっとおしいんだけど、勉強もできるし、スポーツもそこそこできるわけだよ。

小田嶋:あの感じをリアルでやっているって、どれだけ気持ち悪いのよ、というのがある上に、実際、勉強や運動もがしがしできるので、さらに距離が開いていきます。

:会社なんかに就職すると、その「曇りのないタイプ」は、普通に大量に出てくるんですよ。しかも、もっと洗練されてね。

小田嶋:だけど、社会って、人生って、そんな「曇りのなさ」で渡れるほど、簡単じゃなく、もっと複雑だったり、逆に単純だったりするでしょう。

たとえば?

小田嶋:たとえば東大卒が一番で、俺は常にそこにいるぞ、みたいな意識で凝り固まっていると、仮に早稲田大学卒のやつに先を行かれたなんてときに、価値観の整理、収拾がつかなくなる。それ以前に、そもそも学歴なんかへとも思わない人たちの方が、世の中では結構、全然強かったりする。

:学歴が通用するのは、ほんの入り口だけ、ということですよ。

小田嶋:でも先日、その苦手だったやつとすごく久しぶりに会ったら、なぜか話が通じるやつになっていたんだよ。そうしたら、「いや、実はメンタルをやってね」ということでした。

:どういうこと?

小田嶋:要するに、長いことうつ病で、会社を休んで、その後に復帰したという話だった。

:僕らの年代になると、ハイテンションでやってきた自己認識と、老いて道半ばの現実とのずれが、もう体力的に埋めきれなくなるでしょう。自分は優秀だ、という自己認識でやってきた人ほど、そのギャップは深く、越えがたいと思うよ。

自分の劣等感と、どう向き合うのか

小田嶋:かといって、無垢でフレッシュなスタートラインには、もう戻れないしね。

:だとしたら、「俺、うつじゃないかな?」と思いながら、毎日をやり過ごしているやつの方が、むしろ生き延びる確率は高くなるかもしれない。まあ、それはそれで、いじいじした人生になりそうな気もするけれど。

小田嶋:とはいえ、ずっとテンション高くやってきた人の方が危ないと、俺も思う。そういう人は、立ち止まったときに、対処の仕方が分からないだろうから。

:分からないと思いますよ。だから、やっぱり、劣等感みたいなものと向き合っておかないとだめなんじゃないかな。言い訳も含めて。

岡さんは、劣等感とはどのように向き合っているのですか?

:劣等感はあまり感じません。そもそも勝とうと思うから、「自分は劣っているのでは?」と、自分に対して疑念が湧き、それが胸の内に定着してしまうんじゃないか。

小田嶋:その側面は大いにあると思う。

:人生は勝ち負けじゃない、というのはきれいごとに聞こえると思うし、仕事の中では「勝たねばならない」と、気合いを入れないと、どうにもやってられない日々ですよ。でも、そこでなお、「負けてもいいじゃないか」と自分を許す。その角度を担保するべきなんですよ。

小田嶋:そういう意識設定は大事だと思う。

:ある意味、自分を甘やかす能力ですよね。ときどき甘やかさないと、一気に深刻な事態に入り込む恐れがある。