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 私たちは逗子マリーナで、葉山の海を前にしています。小田嶋さんが佐島で、なりたい自分を探したあげく、あやうくヨットマンになりかけた話は、面白かったですね。

小田嶋:しょうもない話です。

 ある意味、期待通りです。

:小田嶋をヨットクラブに勧誘したA男といい、小田嶋の交友関係というのは、意外だけど抜群に広いわけよ。

小田嶋:そうそう。だから、岡と俺とは、結構人に対する許容度は違う。

:さすが次男坊というか、僕なんかは全然そういうところには入っていけないもの。

小田嶋:岡の人脈はわりと限られているよね。

:僕、友達が少ないんだよ。

 実は小田嶋さんの方が社交的だった。

:逆に見えるでしょう?

 はい。

:違うんだ、これがね。

小田嶋:俺は劣等生ネットワークもちゃんとフォローしていたし、地元のヤンキーがかった連中との付き合いも、そこそこ断てないでいたし。

海を見ていたオダジマ、家が破産したオカ

 そういう関係も、こなしていたんですか?

小田嶋:こなしていましたよ。岡なんかはヤンキーの連中とは付き合わなかったですけどね。

:僕は気持ちだけ、ハイエンドの方にあったから。ただ、偏差値が付いてこなかったんだけど。

 小田嶋さんが学生の時、千葉の海岸の「海の家」でトウモロコシを売っていたりしたのは、そういうヤンキーつながりだったんですか。

小田嶋:大学1年の夏ね。あの時は千葉で一日中、海を見ていたら、精神的に不安定になって、おかしくなっちゃった。俺たちが大学1年生の時は、何十年かぶりの雨が多い夏で、冷夏だったんだよ。俺はその時に、ちょっと内面的な危機に陥った。

 診断のつくようなひどい鬱じゃないんだけど、調子がすごく悪くて。大学に入った後の虚脱もあったけれど、あれは海を見ていたこととも無縁じゃなかったと思う。

 海を見ていると鬱になる説は、小田嶋さんだけでなく、早稲田出身の某有名な作家もおっしゃっておられるそうですよ。

:海が原因かどうかは知らないけど、小田嶋の調子が悪い時期は、確かにあったね。小田嶋の場合は、躁鬱というよりも、時々鬱になる、という感じ。

小田嶋:躁状態はないんだよ。

:時々鬱になって、そういう時は学校に来なくなる。でも、小田嶋の家に行っちゃえば会える。友達が来ているのに会わない、というほどひどくはならない。