岡:あの中で、誰にもぶつからないで、交差点を渡り切ることは、日本人にとっては、それほど難しいことじゃない。
小田嶋:規制によって動いているというよりは、一番近い距離の人間との適切な距離感を保つセンサーを働かせて、みんなが動いている。
岡:しかも、スマホを見ながらね。
小田嶋:まあ、俺らは、ある程度の年齢になった時点で、斜めに渡れなくなったけど。
センサーが劣化して。
岡:今の話でもう1つ分かったのは、渋谷のスクランブル交差点を渡っているやつって、基本、若者なんだよ。
小田嶋:そうか。若いって大切なことだよね。たとえば、ミャンマーとかカンボジアとか東アジアの超新興国の人ごみって、めちゃくちゃじゃないか。でも、あそこにごしゃごしゃっといる人たちは、平均年齢が二十なんぼで……。
岡:そうか……。そこは全然日本と違うな。
小田嶋:いや、正直に言うと、我々50代、60代の人間は、センター街のスクランブルに突っ込まれると、結構もたもたするのよ。
岡:僕はよく車であの交差点を渡るんだけど、信号が変わった時に、取り残される人たちがいる。それ、必ず年を取っているね。
小田嶋:たとえば自転車で商店街みたいなところに行くでしょう。そうすると、若いやつはスマホを見ながら歩いているんだけど、後ろから俺が自転車で近づいていることも、ちゃんと察知しているんだよ。自転車って大きな音がしないんだけど、俺が横を通り過ぎようとすると、スマホに目を向けながら、すーっと、ギリギリに道を開ける。
岡:おじさん、おばさんは違うだろう。そういう僕もおじさんだけど。
小田嶋:おっさんとかおばさんって、スマホを見ているわけでもなく、しかも俺の自転車は前から向かっているのに、なぜかぶつかりそうになる。
岡:いるよ、いるいる、うまくよけ合うことができない人。
小田嶋:こっちとしては、わりとギリギリの感じで、「よけてやったぜ」と思うんだけど、ふと振り返ると、こっちを睨んでいるんだよね。
アタマの横の吹き出しに「危ないわね、あんた」みたいなセリフが入っている。
小田嶋:危ないのはあんただろう、というのが俺の言い分なんだけど。だから今、電車の中でトラブルを起こすのは、大半がじじいだというじゃないか。
岡:そうなの?
団塊の世代だけは、当たってます
小田嶋:キれて駅員を殴るとか、物を壊すとか、あれ、じじい率が高いらしいよ。
岡:そういえば、高速道路も逆走しているよね。昔は、逆走したりするのは暴走族だったじゃない。
小田嶋:今の世相でいう逆走およびひどい運転は、じいさんばあさんなんです。
岡:年を取っているって、やばいね。僕、悲しくなっちゃう。
小田嶋:これは微妙な話で、どこまで本当か分からないんだけど、世代論というものの中で1個だけ当たっているくくりは、「団塊の世代」だと俺は思うんですね。
岡:どういうこと?
小田嶋:たとえば昭和30年代には、少年犯罪がめちゃめちゃ多かった。昭和40年代には青年の犯罪が多かった。そして、60年代以降は中年の犯罪になった。ということは、ある世代がずっと段階を追って、それらを起こしている、と。
岡:ずっと団塊ってことじゃん。
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