小田嶋:岡が俺からぶん取ったスカイラインも、後年、だんだんいろいろなところが壊れてね。チョークをやっとこで引っ張って、エンジンをかけていたでしょう。

:そんな車も、もうないですよね。今の人はチョークと言っても分からないでしょう。

 電気どころか水素で車を走らせましょう、という時代になりました。

:本当に大昔だよね。あのスカイラインは、ドアも壊れていて、後ろのドアが両方とも閉まらなかった。それでドアの両端を1本の縄で結んでいるから、結局後ろには誰も座れないようになっていた。

小田嶋:だから、2シーターね。

 あはは、おしゃれだったんですね……って、今日は小田嶋さんの退院その後の話を聞きたかったの。そういうテーマ設定のはずだったのに、また違う方向に行っています。

:そうでしたっけ?

小田嶋:退院? はい?

 小田嶋コラムのファンのみなさま、そして関係各所からはご心配をいただきました。退屈はしない、と言っていましたが、、3カ月どうでしたか。

小田嶋:いや、別に…。

 本当に退屈しなかったですか?

模範患者、オダジマ。そのわけは?

小田嶋:病院って、そこにいると環境に慣れるものなのよ。あそこにいると、身も心も病院の人になる。

:なりますね。

小田嶋:だって、病院って楽なのよ。毎朝看護師さんたちが、「おはようございますー」とか言ってくるわけだよ。そうなると、こっちも「今日は担当誰かなー」なんて。

 小田嶋さんの入院先は、病院じゃなくて、老人ホームだったんですね。

:そうね。すっかりおじいさんの感じだったね。

小田嶋:入院したての一瞬は気が張っているんだけど、入院後はいろいろなことをスケジュール通りに全部与えられるでしょう。何時に検温で注射で薬で、と、何だかんだで1時間ごとにイベントがあるわけ。

:言葉を変えると、管理されている。

小田嶋:だから何にも考えなくていいの。

:だけどお前は、サラリーマンの時は、管理されることがすごく嫌だったよね。何で入院では大丈夫だったのかな。

 鋭い質問です。

:でしょう。

小田嶋:いや、初めは嫌だったんだけど、じきに慣れちゃったのね。

:いや、違うよ。入院している自分は弱い者だ、という前提があるからなんだよ。その弱き者が、退院する時には最強になっていく。サラリーマンは大学を出て、俺は最強だ、と思って入った後に、管理され続けて弱い者になり下がってく。そういう逆プロセスだと、管理に耐えられないんだよ。

 鋭い。座布団一枚。

:お笑いを話しているわけじゃないんだけど……。

小田嶋:ともかく入院患者とサラリーマンとは、辿るプロセスが確かに逆なんですね。