前回、昨年3月に自転車事故で入院した小田嶋隆さんの病院に、高校時代の同級生であるクリエイティブディレクター・CMプランナーの岡康道さんが押しかけての対談をお送りしました。今回は退院後のお二人のお話です。長い入院生活で、オダジマ氏の心と体には、なにか変化があったのでしょうか?

(前回から読む

 ということで、無事退院された小田嶋さんと、岡さんの会社(TUGBOAT)にお邪魔しています。

小田嶋:お前、何くわえているの? ボールペン?

:電子たばこだよ。僕は去年、これに替えました。

小田嶋:それって、ニコチンが入ってくるの?

:そう、ニコチンが入ってくるけど、煙が出ない。だから、みんなに迷惑がかからない。でも、確かにボールペンをくわえているような、ばかな感じになるんだよね。だからちょっとこう、恥ずかしい。たばこというのは、もはやカッコつけて吸うものじゃなくなっちゃったね。

小田嶋:となるとそれは、たばこではなく“ニコチン摂取ツール”みたいなものか。

:そうそう。タールが入ってこないから体には楽でね。1週間ぐらい、これを吸ったでしょう。で、普通のたばこに戻ろうと思ったら戻れなかった。タールが苦くて、気持ち悪くて。あれ、相当体に悪いよ、たばこは。

 いまさら、何を言うんですかね。

:いや、ニコチンはいいと思うんですよ。タールがだめなの。肺を汚すのもタールでしょう。

小田嶋:ニコチンはちょっと鎮静作用があったり、若干いいこともあるんだよね。悪いこともあるけど。

:悪いことでいえば、毛細血管を縮小させて、常に血圧が上がるようになっている。心臓に負荷がかかる。

小田嶋:だから血管に打つのが本当はいいんだけどね。

 おいおい。

:この間、人間ドックで肺活量を調べたら4100だったのよ。50代の後半は普通、平均で3100ぐらいで、4100は異常な数値だと言われた。だから、たばこって、体にいいのかな?って。

 おいおいおい。

小田嶋:……まあ、そうね。俺は自転車の事故入院で心肺機能は落ちましたね。運動しないでいたからね。

 自転車はトラウマにはなりませんでしたか。

ウォークマン以来の発明だ!

小田嶋:大丈夫でした。ただ、自転車に乗れるようになるまで、やっぱり時間がかかりましたけどね。

:また乗っているの、お前。

小田嶋:乗っています。

:もういいんじゃないの。

小田嶋:いや、自転車でも乗らないと運動ができないんだよ。

:歩けばいいんじゃないか。

小田嶋:1キロぐらい歩くと、ふくらはぎだけ疲れちゃって。滞った疲れになるのよ。

:実は僕もこの間、自転車を買ったんだけど、電動アシスト付きにしちゃった。

小田嶋:上り坂になると押してくれるやつ?

:実を言うと、ものすごく楽なの。

 前と後ろに子供用のカゴがある、というあれですか。

:いや、ママチャリとは違うんです。まあ、大きなカゴはあるんだけどね。あれ、坂道とかを走ると、自分がものすごい選手になったような気になる。スースーっと行っちゃうね。

小田嶋:俺が自転車に乗っていて「あれっ?」な瞬間は、坂道を登っていておばさんに抜かれることだよ。

:ママチャリで、しかも子供を後ろに乗っけていたりする人がぐんぐん抜かしていく。いや、あれには実際驚きましたね。ウォークマン以来ですね。

 一気に遡りましたね。

小田嶋:パソコンを飛ばしているぞ。

 右の『超・反知性…』の元となった当サイト連載の「ア・ピース・オブ・警句」の筆者、小田嶋隆さん。当サイトでのもうひとつの連載が、高校時代からの旧友、岡康道(TUGBOAT代表)さんとの、2007年からはじまった日経ビジネスオンライン屈指の大河連載、この「人生の諸問題」です。
 おかげさまでNHKや全国紙、スポーツ紙、夕刊紙などなどからインタビューが目白押し、書評でも大好評、三刷り!の『超・反知性主義入門』。まさに今回の収録の際と前後した時期に書かれた、入院期間の小田嶋さんのコラムも入っております。高校時代の同級生、森本あんり・国際基督教大学副学長との2万字に及ぶ「日本人と宗教、そして反知性主義」をテーマとした対談も読み処。それでは引き続き、清野由美さんのナビゲートで「人生の諸問題」を、のんびりまったりお楽しみ下さい。(Y)

次ページ 早稲田もニッポンも“発展途上国”だった