入院中の方々とは仲良くされているんですか。

小田嶋:あまり詳しくは分からないんだけど、おそらくかつての俺と同じ病状の人がいる。ほら、アル中って、よく転ぶじゃないか。

:確かに、転ぶ。

小田嶋:転ぶのもそうだし、長い間、栄養を取らないでいるから骨がもろくなっている。

:お前は酒をやめて、本当によかったよ。

小田嶋:そうそう。やめてなかったら、自転車で転ばなかったにしても、こうなってたんだな、という感じはすごくある。

そうですよね。

小田嶋:でも、そのアル中さんのところには、複数の女性がいつも出入りしていて。

:何だよ、それは。だいたい入院中だろ。

小田嶋:いや、アル中というのは、ある種モテるんだよ。

:何でだよ。何かむっと来るな。

小田嶋:きっとね、破滅していく人間に対しての、ある種の女性の何とかというのがあるんですよね。ナイチンゲール症候群というか、小さな看護婦さん体質みたいな生まれつきの人たちっているのよ。で、そういう体質の女性が、私が付いてないとだめ系な男に寄っていく。

:そんなことになって、モテてもしょうがないとは思うけどね、俺は。

微妙ですね。

:まあ、アル中のやつって、飲みに行くわけだから、知り合うチャンスも多いわけよ。

小田嶋:それで、「そんなに飲んじゃだめじゃない」みたいなことを言う人というのは、必ず現れるわけ。

:だから、誰にでも、モテるわけでは、きっとない。

面会する女の子のバッティングを避けろ!

小田嶋:それで、そのアル中さんとは別に、何かの事故で、足と背骨が怪我でがちがちになっている人もいる。だけど彼は、いつも楽しそうにしているんだよね。

:若いの?

小田嶋:若い。

:若いと、そんなに絶望的にならないんだよ。

岡さんも若い時に入院されていましたよね。

:アメリカン・フットボールで腎臓破裂になった時ね。あれは確か大学1年の時か。

じゃあ、ぴちぴちだった。

:うん、全然平気だった。だって、その時はまだ家もあったし(笑)。

小田嶋:あの時はまだ、前途洋々のころで。

:そうそう、前途洋々だった。

小田嶋:だから、あの入院が、その後に続く家の破産、おやじさん失踪、のプロローグだったね。

:確かに(笑い)。これからやって来る暗転への兆しだったね。

小田嶋:岡が入院したのは、早稲田のD病院でしょう。
岡 そうそう、D病院。あの入院の時は、小田嶋が活躍してくれたのよ。

そうなんですか。

小田嶋:そうなんだよ。お見舞いに来る女の子たちがかち合わないように、コントロールタワーが必要なんだ、ということになって。俺は、月曜日はA子ちゃん、火曜日はB子ちゃんみたいなことを、岡から事細かに説明を受けて、かち合わないように、こうスケジューリングしていくのが、結構なかなかのもので(笑)。

次ページ “野戦病院”に寿司が届くと