
(ということで、お話は昨年の4月、某病院の応接室に戻ります)
小田嶋さん、退屈されていませんか?
小田嶋:いえ、それほど。そもそも俺は、あんまり退屈する人じゃないのよ。
岡:小田嶋は入院生活と日常が、あまり変わらないんだよね。
小田嶋:家で本を読み、ネットを漁っているというのと基本的に同じですよ。だから今、娘が「こういう時こそ『ジョジョ』を読まなきゃいけない」と、激しくすすめてきて。「物を書く仕事をしている人間が『ジョジョ』を知らないとは何ごとか」というのが、娘さんの日ごろのご意見なので。
(※『ジョジョの奇妙な冒険』:荒木飛呂彦の不朽の長編大河漫画。単行本は現在、100巻を超えて刊行中。)
小田嶋:それで、カラー版のやつをKindleでダウンロードして、1巻を読んで、じゃあ次も見ましょうかといって、第3部18巻、『スターダストクルセイダース』まで、何だかんだで、30巻ほど読みました。
岡:ゴールは何冊なの?
小田嶋:100巻くらいだね。1日2冊見当だから、じきですよ。
ジョジョ・ストレッチ
岡:面白いの?
小田嶋:面白いといえば、面白い。それで、俺はこの間から「ジョジョ寝」というのを編み出して、応用している。
岡:「ジョジョ寝」?
(※『ジョジョ~』には関節を不自然にねじまげた「ジョジョ立ち」というポーズが頻出し、作品の大きな特徴になっている。ファンが「ジョジョ立ち」を真似して喜ぶイベントまである。)
小田嶋:要するに、左足ひざを固定した状態で寝ていると、体のいろいろなところが動かなくなるでしょう。たとえば腰がこっちにいかないとか、常にベッドに付いているのがお尻の片側であるとか、その状態がすごく嫌で、この関節をあっちに曲げて、あっちの関節をこっちに伸ばしてとか、いろいろなことをしたくなるの。で、ベッドの上でいろいろやっていたら、あ、これ、ジョジョのポーズじゃんって。
岡:そもそも「ジョジョ立ち」というのは、とても妙なポーズだね。
小田嶋:今の俺はジョジョ立ちどころか、立つことさえもおぼつかないわけだけど、寝たきりになると、関節の可動域ってすごく失われていくから、いろいろな関節を常にいろいろな方向に動かしていないとだめなんだよ。
岡:要するに奇妙なストレッチをやっているということか。
小田嶋:奇妙なストレッチなんだけど、それに「ジョジョ寝」という名前を付けて、リハビリにしている。『ジョジョ~』も俺はただ読んではいないわけよ。

右の『超・反知性…』の元となった当サイト連載の「ア・ピース・オブ・警句」の筆者、小田嶋隆さん。当サイトでのもうひとつの連載が、高校時代からの旧友、岡康道(TUGBOAT代表)さんとの、2007年からはじまった日経ビジネスオンライン屈指の大河連載、この「人生の諸問題」です。
おかげさまでNHKや全国紙、スポーツ紙、夕刊紙などなどからインタビューが目白押し、書評でも大好評、三刷り!の『超・反知性主義入門』。まさに今回の収録の際と重なる、入院期間のちょっと弱気な小田嶋さんのコラムも入っております。高校時代の同級生、森本あんり・国際基督教大学副学長との2万字に及ぶ「日本人と宗教、そして反知性主義」をテーマとした対談も読み処。それでは引き続き、清野由美さんのナビゲートで「人生の諸問題」を、のんびりまったりお楽しみ下さい。(Y)
Powered by リゾーム?