内藤:お客様がいるのに早く帰るのは、従業員も罪悪感があり、できない。そうではなく、仕事がないから早く帰ってもらう。それも賃金が減るのではなく、忙しいときの超過勤務のために労働時間を貯金するのですから、理にかなっている。

 お客様が少ないときに帰る順番は決めておきたい。「どうしてあの人だけ早く帰るのか」ともめるからです。現在、稼働対応制の導入を進め、こうした細かいノウハウを蓄積しています。

現実に合わせて社員が不利にならない運用を

法的に、稼働対応制の仕組みは問題ないでしょうか。

内藤:労働基準監督署や労働局に行って相談しましたが、問題ないという答えでした。法定労働8時間に対し、今は所定労働7時間や7時間30分の会社があります。所定4時間はそれと同じですから。

 ただし、所定4時間にして給料を下げてしまうと、それは労働者にとって不利益変更ですから、固定残業時間4時間分は必ず支払うようにしているわけです。

 こうした内容はあらかじめ就業規則に盛り込んで周知徹底し、労使で合意しておくことが肝心です。従業員の理解のため、賃金の考え⽅も変えます。賃金の内訳を所定労働時間に対応する部分となる「所定給」と所定外労働時間に対応する部分として「所定外給」に分け、それを就業規則等で明確にする。これは適切な割増賃金の計算にも必要となります。

 ただし、稼働対応制はつくって間もない仕組みで細かい制度設計については検証を続けています。現実と合わない部分が出たら、社員に不利にならないような運用を考えていくべきでしょう。

働き方改革では、この稼働対応制のように労働時間制度の変更まで踏み込むことが今後求められてくるかもしれません。

内藤:働き方改革の本質は、作業の進め方を見直して生産性を高めることです。飲食店や旅館なら調理の準備や仕込みの手順を見直して、働き方を変えていく。そうして仕事が早く終わったら、早く帰る。それを積み上げることでしか時短は進みません。

 時短を突き詰めれば、どうしても労働時間制度を再考する必要がある。プレミアムフライデーで時短の機運を盛り上げることはいいのですが、具体的に時短をどうするかという戦術のほうが圧倒的に大事だと思います。

(この記事は「日経トップリーダー」5月号の特集の一部を再編集したものです)

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