内藤:確かに季節変動がある工場には年間変形労働制が向きます。繁忙期は法定労働時間を守れなくても、閑散期の労働時間と相殺し、年間で平均して週40時間の範囲内なら、繁忙期の残業代は不要です。
しかし、この制度はサービス業の実態には合いません。
どうして合わないのですか。
サービス業の実態に合わない変型労働制
内藤:変形労働制を導入するには、あらかじめシフトを組んで従業員に周知し、変更してはいけないといった制約条件があるからです。
月間変形労働制ならば、1カ月間のシフトを期間に入る前日までに従業員に周知する必要があり、期間に入ったら変更できません。当日になって仕事量が大きく変動することが多いサービス業の実態とはまるで合わないのです。
製造業では在庫を持つことができるので、出荷量に波があっても在庫によりある程度は吸収できます。しかし、サービス業ではお客がいなければ仕事ができません。
では、サービス業が客数の波に合わせて時短を進めるにはどうすればよいのですか。
内藤:変形労働制にしてもフレックスタイム制にしても、労働時間管理の仕組みにはそれぞれ一長一短があります。
ですから、法律や就業規則に合わせて実態の労働時間を管理する発想ではなく、仕事の実態に合った使いやすい労働時間管理の仕組みを考えて就業規則にすればいいのです。
それで私は「稼働対応労働時間制(稼働対応制)」というサービス業に合う仕組みを考えました。
シフトを変更できないという縛りがない
どんな仕組みですか?
内藤:今まで1日の所定労働が8時間だったところを、例えば、「所定労働4時間」「所定外労働1日平均4時間」に分ける。ただし給料は従来と同じ8時間分を必ずもらえるという就業規則にします。
所定外労働とは、つまり残業です。毎日決まった残業が4時間ずつあると考えます。そして「所定外労働4時間」の分まで含めたシフトを組み、「所定外労働4時間分は、当日も変更できる」という取り決めをしておきます。
変形労働制だとシフトを変更できない縛りがありますが、稼働対応制にはそれがない。
Powered by リゾーム?