天候や季節、時間帯などによって大きく変動するサービス業の忙しさ。予想が難しいため、仕事の平準化が難しく、時短も進めにくいといわれる。

 ここで注目したいのが、著者の内藤耕氏が提唱する新たな労働時間の管理法「稼働対応労働時間制」。この仕組みをうまく活用すると、従来より柔軟なシフト運用ができ、仕事がなくなった社員には早く帰ってもらえるようになる。現場の生産性向上につながり、会社と従業員の双方にメリットがある仕組みだ。

 この管理法を提唱する内藤氏が詳しい仕組みと導入時の注意などについて語る。

サービス業は製造業と比べて仕事を平準化しにくい。それにどう対処するかという問題が、時短対策ではついて回ります。

容易でないサービス業の時短

内藤:サービス業の忙しさは大きく変動します。観光ホテルの場合は、夏は忙しく冬は空いているといった季節の波があります、百貨店なら週末が忙しい。

 また、飲食店の場合には1日の中でも波があって、ランチとディナーの時間が集中して混みます。遊園地のように、雨が降れば途端に客数が大きく減るなど、天候による変動もあります。こうした変動には、ある程度予想できるものと、急な雨のように予想できないものがあります。

 社員の人員配置が適正かどうかを分析するには、客数と比較することになりますが、サービス業ではその客数自体が様々な要因で変わりやすいので、労働時間の短縮は容易ではないのです。

労働時間の基本を知る
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注:1日8時間、週40時間を超えて社員を働かせる場合は「36協定」を締結。休憩時間は簡略化のため、図中に表示していない
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仕事の量に波がある職場には、変形労働時間制(変形労働制)という仕組みがあります。

内藤:変形労働制とは、繁閑の波が激しい職場などで、労働基準法の定める「1日8時間、週40時間」の法定労働時間が守れない場合に認められる特例です。

 1年、1カ月などの期間内の平均労働時間が週40時間以内に収まれば、割増賃金を払わなくて済むというものです。1年の期間で調整する「年間変形労働制」、1カ月の期間で調整する「月間変形労働制」などがあります。

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