ここまですれば、どこに人員の無駄があるかが手に取るように分かり、その対策も見えてくる。石和健康ランドではこうした作業を日々進め、予想来館者数(図4)に合わせてシフトを組んでいる。

予想来館者数は、基本的に前年の同週同曜日の実績値。販促イベントの予定があれば、人数を増やすなどの微調整を加える。この予想来館者数を基に、日ごとの想定労働時間を算出する。算出方法は簡単で、分かりやすく言えば図3の赤線上に乗るようにする。
こうして、「○月○日はAさんが午前8時出社で7時間勤務、Bさんは午前9時出社で8時間勤務」というように、できるだけ無駄のないシフトを組む。
以前のフロント担当は「早番4人、遅番4人、深夜2人」の体制だったが、今では「早番3人、遅番3人、深夜2人」と2人分を減らすことができたという。
仕事の成果物は何か
さて、ここまでは主にフロント業務を例に話を進めてきたが、他の部門はどうしているのか。基本的な分析手順はフロントと同じだが、指標だけが少し違う。例えば、食事スペースの大広間はこのようにしている。
フロントは来館者数に対し、人員配置が適正かどうかという視点で見た。しかし、来館した人全員が食事をするわけではないし、食事をしても、軽食で済ますお客もいれば、たくさん食べるお客もいる。そこで大広間では、商品提供数を指標にしている。

商品提供数が多ければ、それに比例して仕事も忙しい。そこでフロントの図3に相当する大広間のグラフは、横軸に商品提供数、縦軸に実働時間を取っている。
「それぞれの仕事の成果物は何か、という観点で指標を決めている」と荒井総支配人。フロントは1人でどれだけの受付業務ができるか、大広間はどれだけ料理を運べるかが成果物というわけだ。
こうした働き方の分析により、石和健康ランドでは、残業を減らしつつ、社員1人当たりの売上高、利益も増加。毎年、賃金のベースアップを続け、賞与も年3回支給する。「経営するほうも、私たち社員にとっても、ハッピーな状態」と、社員たちは皆、満足げだ。
(この記事は「日経トップリーダー」2017年5月号の特集の一部を再編集したものです。記事執筆は日経トップリーダー編集部の北方雅人)
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