「長時間労働が多いことが嫌われて、人を採用してもすぐ辞めてしまう。うちはいつまでも人手不足から抜け出せない」──。
こうした悩みを打ち明ける中小企業経営者は多い。長時間労働の解消が進まない理由は、多くの経営者が正しい時短の方法を知らないからだ。「残業を減らせば売り上げも減る」という誤解もある。残業時間の削減が必要と分かっていても、業績維持との板挟みで、時短推進に二の足を踏んでいる。
さらに、飲食店や小売店といったサービス業は「お客が1人でもいる限り、従業員は帰れない」という事情も、残業削減を阻むカベとなっている。
しかし、そこで思考停止していては、長時間労働の“ブラック企業”という評判を拭い去れない。
では、どうすれば時短に踏み出せるのか。
本コラムの著者であるサービス産業革新推進機構の内藤耕代表理事は、「ほとんどの中小企業経営者は、自社にとっての適切な人材配置とは何かがよく分かっていない」と指摘する。実はここに時短に取り組むヒントがある。
また、「人手不足は思い込みで、実は人が余っている例が多い」とも言う。
人材配置の無駄は、感覚ではなく、データを基に考えれば必ず解は見つかる。
内藤氏に、時短の第一歩である「働き方の無駄の見つけ方」について聞いた。
サービス業(サービス業とは非製造業全般で、卸売業や小売業などを幅広く含む)ではなかなか時短が進まず、休みも取りにくい会社が多いですね。

人手不足は嘘なんじゃないか?
内藤:サービス業では、適正な人員配置ができていない会社がとても多い。ただ、これは特定の経営者が悪いのではなく、どのように働けば生産性が上がるのかというアプローチ方法が確立されていないから。そこが問題なのです。
ある会社では、23人の従業員で300人のお客様にサービスを提供した日があるかと思えば、客数は同じ300人なのに、従業員が38人も出勤している日がある。全く適切な配置ができていないのに、それが問題だという意識が経営者にも従業員にもない。
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