常識にとらわれず、生産性向上の方策をいろいろと試してみることが重要なのでしょうね。

内藤:そのためには、データを取ることが重要です。生産性を考えるときに重要な指標となる「人時生産性」は、売り上げから仕入れ代を引き、その日の総労働時間で割ればいいだけ。簡単に計算できるのに、人時生産性を定期的にチェックしているサービス業はとても少ない。数値をモニタリングしていれば、どこをどうすれば生産性が上がるのかということが見えてきます。データを取らず、感覚で捉えているからとんでもない誤解をしやすい。

 旅館の中には朝から刺身を切っているところもあります。仕込みは最低限にして、あとはお客さんの食事時間に合わせて調理すればいいのに、大きな宴会が当たり前だった時代の名残で、現場ではどうしてもまとめて作業したがる。今は2人、3人の個人旅行が主流です。むしろ客単価が高いので、旅館側もこのようなお客さんを増やそうとしているのに、そうした発想がなかなか出てこない。これも生産性のデータを取って現場を見ていないからです。

 自社の生産性をデータできちんと把握し、その上で、現状を変えるための改善をして、数字の変化を見る。数字が改善したら、本格導入。改善しなかったら、別の手を考える。これを繰り返せばいい。どんな改善をすべきかというと、前回お話しした「リアルタイム・サービス法」の考え方に沿って、サービスの前工程の作業を、お客さんがいるサービスの最終工程の現場にできるだけ引き寄せていくのです。

中小サービス業こそ、マニュアル化

「位置」「時間」「情報」をお客さんに近づけるのですね。

内藤:そうです。具体的な手法としては、小ロット化、標準化、マルチプロセス化などがあります。特に強調したいのは、標準化、つまりマニュアル化の重要性です。

 標準化に成功すれば、従業員教育のスピードが上がります。またその結果として、1人の従業員が複数のスキルを身に付けるマルチスキル化が実現します。すると、忙しいときには分業制でスピーディーに仕事を片付ける一方、それ以外のときは、1人が複数の仕事を兼任してそれらを同時に行うことで労働時間を抑えるといった、柔軟なシフトが可能になります。これがマルチプロセス化です。

 中小サービス業には、マニュアルを使った標準化はなじまないと考える経営者もいますが、それは間違いです。中小サービス業で標準化が遅れているのは「ホスピタリティーが阻害される」という誤解があることと、経営者が「自分の目が行き届いているので大丈夫」と過信しているのが理由です。でも実際は、小さなミスが多発しているのに、それを経営者が見逃しているケースが多くあります。

 標準化を進めることで、サービスの品質が安定し、従業員が基礎技術を習得するまでの時間が短縮できます。気持ちに余裕のできた従業員は顧客満足度を上げようとしますから、ホスピタリティーはむしろ高まります。また、より創造的な仕事に時間を使えるので、働きがいも増す。会社が大きくなってから、マニュアルを作るのではありません。マニュアルを作った企業が、結果として大きくなるのです。

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