作業時間と労働時間の違い?

内藤:企業が考えなければならないのは、労働時間と顧客満足です。賃金は労働時間によって決まりますし、もっとも大事な売り上げはお客さんの満足の対価ですから。

 製造業は、作った製品を在庫できるので作業時間の短縮がそのまま労働時間の短縮につながります。けれど、サービス業の場合は、先ほどのラーメン店のように、作業時間を減らしたところで、それがそのまま労働時間の短縮につながりません。

 頑張って10分の作業を5分に短縮しても、お客さんが来なければ、作業時間は減っても、労働時間は何も変わりません。そうすると労働生産性は改善しない。

お客が求めることをしてこそ、サービスになる

 サービス業にとっては、お客さんが求めたタイミングで、お客さんが求める品質のサービスをきちんと提供できるようにすることが大事なのです。

 つまり、一つひとつの作業スピードが速まることで、このタイミングが合うだけでなく、空いた時間に一人ひとりのお客さんに、より多くの手間をかけられようになり、顧客満足をさらに上げられます。その点においては作業時間の短縮が持つ意味はあります。

 だからサービス業にとっては、作業時間の短縮の目的が違うのです。サービス業の生産性を改善しようというとき、ストップウォッチを持ち出して、作業時間の短縮ばかりを指導する人がいますが、それってどうなの、と思いますね。

お客さんにサービスを提供できなければ、作業時間だけを減らしても意味がないわけですね。

内藤:サービスを数学的な集合モデルで考えれば、「顧客の要求事項の集合」と「提供作業の集合」の重なる部分だけが、実際のサービスなんです。

 お客さんが求めていないことを提供しても、サービスにはならない。逆にお客さんが求めていることを提供できないのは、機会損失です。この2つが重なった積集合の部分を拡大することが、顧客満足を高めると同時に、企業の生産性を引き上げることにつながる。

 製造業で生産性向上というと、機械化して人を減らして、というふうに意識が働きますが、サービス業の場合はそうではない。お客さんの要求事項とサービスの提供内容の重なりを高めるにはどうすればいいか、考えることです。この重なりが広がれば、売上高は増え、人を減らさなくても生産性は高まるのです。(次回に続く)

(聞き手は、日経トップリーダー副編集長・北方雅人)

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