元ヤフー社長の宮坂学氏が東京都副知事に就任して3年半。宮坂氏はヤフーで「爆速経営」を打ち出し、LINEやアスクルとの提携など矢継ぎ早に経営改革を行った。DX(デジタルトランスフォーメーション)が遅々として進んでこなかった行政で、その辣腕はどれほど発揮できたのか。副知事1期4年の最終年に入った宮坂氏に聞くと、DX改革における「泥臭さ」の重要性が浮かび上がった。

■主な連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
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セブン&アイ、DX本部分裂からの再出発 参謀が組織を強くする
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ベネッセの危機感 赤ペン先生のデジタル化では足りない
三菱UFJ、破綻米銀SVBから約20人採用 デジタル社長が破る殻
ニトリとベイシアG、小売りの勝ち組に共通する「人が起点のDX」
・爆速経営で挑んだ都庁のDX 元ヤフー宮坂学が語る3年半の格闘(今回)
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・元オープンハウスの田口氏、「トップ営業マンからDXを浸透させた」

宮坂学(みやさか・まなぶ)氏
宮坂学(みやさか・まなぶ)氏
1967年生まれ。97年ヤフー入社、2012年に同社長、18年に同会長。19年7月に東京都参与に転じ、同9月から副知事。(写真=吉成 大輔)

「IT未開の地」に飛び込む

最先端の大手IT(情報技術)企業から転身して都政に入りました。行政の世界はどのように見えましたか。

宮坂学・東京都副知事(以下、宮坂氏):2019年、小池百合子知事に誘われて東京都副知事に就任しました。当時やりたかった仕事はスマートシティーなど先端的なデジタル行政でしたが、中に入ってみて驚きました。私が民間にいた頃にはほとんど使ったことがないファクスや紙の資料がまだ現役。会議があっても職員はパソコンではなく、紙の資料を山ほど持ってきていました。DXの発射台となる基礎がまだできていない。そんな状況でした。

 DXに至るまでの「基礎体力」を身に付けてもらうことを、東京都に来てからの役割に据えました。派手なことをやろうと思って来ましたが、地味な仕事をすることになったのです。

民間と違い、行政がDXで出遅れてしまった理由は何だったのでしょう。

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