利便性を追い求めてきた私たちの社会システムが「悪意」を増長させている。人と人とを結ぶSNS(交流サイト)は悪意を拡散・増幅する装置としても機能する。不透明感の強い社会に渦巻く負の感情は、個人や企業のささいなミスを見逃さない。怒りの対象を「悪」と断定した人々は、容赦ない暴言や嘲笑で“生贄(いけにえ)”を攻撃する。歯止めが利かない悪意の暴走は、個人や企業、社会すら壊死(えし)させる猛毒と言えるだろう。性善説を信じるのは大切だ。だが、降りかかる火の粉からステークホルダーを守らねばならない。理不尽な悪意にあらがうため、まずはそのメカニズムを知り、感情に配慮した企業経営が求められる。(画像=andrewshka/Getty Images)
シリーズ
悪意の研究

全8回
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スシロー「ペロペロ事件」が映し出す SNSで反転する正義感
飲食店での迷惑行為を撮影した動画がSNS(交流サイト)で相次ぎ拡散された。“炎上”の背景を探ると、消費者の悪意が増幅していくメカニズムが見えてくる。企業はどうやって、消費者が引き起こす偶発的なリスクにあらがえばよいのか。
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組織に巣食う悪意への処方箋
組織内で醸成された悪感情への適切な対応を欠いた企業は、後に大きな“ツケ”を支払うリスクを抱える。従業員の声に耳を傾け、悪意の発生を抑制する仕組みづくりが求められている。
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日本人は「いじわる」気質? “愛情ホルモン”の功罪
いつの時代も消えることはない悪意は、大企業の経営すら脅かす“敵”となる。性善説に傾き、手をこまぬいていれば、ステークホルダーを傷つける事態を招く。悪意が生じるメカニズムを理解した上で、経営者が持つべき心構えを考えよう。
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木村花さんの母「その投稿は優しいですか?」
SNSでの誹謗(ひぼう)中傷で悩んでいたプロレスラーの木村花さんが2020年5月に死去した。中傷の撲滅を目指して活動する母で元プロレスラーの響子さんに話を聞いた。
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カスハラ防衛に必要な「相場観」の共有 甲南大学・阿部真大教授
近年、人口に膾炙(かいしゃ)してきた「カスハラ(カスタマーハラスメント)」。カスハラとは、企業や従業員などのサービス提供者に対する消費者の過度な要求や悪質なクレームを指す言葉だ。甲南大学の阿部真大教授は、「サービスの『相…
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ネット情報で企業リスクをAI診断 与信管理のアラームボックス
取引先企業の信用度を測定する「与信管理サービス」を提供するアラームボックス(東京・新宿)は、情報源としてSNS(交流サイト)を活用する。悪意ある投稿も紛れる玉石混交の情報の中から、どのように企業のリスクを判断する材料を拾…
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小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明
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徹底予測2021年 底打ちか奈落か
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不屈の路程
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1000年企業の肖像
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10 Questions
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河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学
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ファクトフルネス思考
「データを基に世界を正しく見る習慣」を紹介した書籍『ファクトフルネス』は、日本で90万部を超えるベストセラーとな…
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大西孝弘の「遠くて近き日本と欧州」
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グルメサイトという幻
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フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える
この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつか…
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ファストリ、異次元の経営
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テスラが仕掛ける電池戦争
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70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄
従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
全8回