横幅110×奥行き110×高さ90(センチメートル)で段積み可能、しかも蓋付きで折り畳める輸送ボックス。そのサイズを聞くと、物流関係者ならピンとくるだろう。

 輸送や保管の際に、荷物を載せるパレットの標準サイズ(110×110センチ)を取り入れた輸送・保管ボックス「DanCago(ダンカーゴ)」。大阪のアルミフレームの会社エーディエフ(ADF、大阪市、島本敏社長)が20年前に開発したものだ。

 「生産のため工場も増設したのに一時は鳴かず飛ばずだった」(島本社長)箱の需要が、「物流の2024年問題」が危惧される状況の中で急伸。19年に6100万円だった売り上げが、23年には2億円に達する見込みで、4年で売り上げを3倍以上伸ばすヒット商品になっている。

需要を伸ばすダンカーゴ
需要を伸ばすダンカーゴ
折り畳んだ状態
折り畳んだ状態

 ダンカーゴの開発のきっかけは、一般家庭に水を販売する会社からの依頼だった。ADFは重量のある水の輸送のために、アルミフレームとプラスチック段ボールを使い、トラックの荷台に積載可能な輸送ボックスを開発した。それがダンカーゴだ。水の販売会社は、ダンカーゴに600キログラム分の水のボトルを入れて運ぶ。段積みすることを想定し、4トンまでの重量に耐えられる造りにしていた。

 だが、思わぬ事態が起きた。ダンカーゴは数万台の大量受注が見込めると考え、40坪だった工場を移転し、5倍に拡張して意気込んでいたが、肝心の水販売会社が数年後に不振に陥ってしまったのだ。

 すでに工場を拡張したこともあり、ADFは新たなアルミ製品の受注制作に力を入れ、他社からの下請けなどでしのぎながら、ダンカーゴの新たな販売先を模索した。目を付けたのが「人が生きている限り需要がある」(島本社長)食品業界と医薬品業界だった。

顧客の声を聞くことでダンカーゴの市場を広げてきたADFの島本敏社長
顧客の声を聞くことでダンカーゴの市場を広げてきたADFの島本敏社長

中身を分別できる「保管庫」にも

 しかし食品業界はコストに厳しい。「1台7万~8万円の輸送ボックスを売り込んでも、需要は少ないだろう」と島本社長は予想した。一方の医薬品も企業の信用を重視する業界ゆえに新規参入の壁は厚かった。

 だが、島本社長は諦めなかった。食品には、衛生管理の国際基準「危険度分析による衛生管理(HACCP)」や、イスラム教徒の食事で使われるハラル認証などに対応するため、食材を分別管理する需要があることに着目した。

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