景気減速など内憂外患の真っただ中にいる米メタ。株価下落が示すように、メタバースへの期待はしぼみつつある。仮想世界はいっときの流行だったのか。同社メタバース部門トップのビシャル・シャー・バイスプレジデントが日経ビジネスの単独インタビューに応じた。開口一番、「自信はある」と言ってのけた彼の熱弁から、メタバースの未来をみる。
単刀直入に、メタバースに対して成功する自信はありますか?
ビシャル・シャー・バイスプレジデント:答えは「イエス」です。どんな新しい事業にもリスクはあります。しかし私たちはすでに多くの成功を収めていますし、メタバースが成功するという希望を持っています。
テクノロジーのトレンドを振り返りましょう。コンテンツはテキストから写真、動画へと、次第に没入型に変化しました。そしてデバイスは巨大なメインフレームからパーソナルコンピューター(PC)、スマートフォン(スマホ)へ、より人間の一部に近づいています。この先に何があるか分かりませんが、より没入型でより個人と密接に結びついたものになるはずです。
私たちは「ここに存在する」ということに、何かしらの可能性があるという確信があります。今まさにあなたと私はここにいて、会話をしている。もしあなたが物理的にここにいなかったら、どうやって“リアルな”会話ができるでしょうか。どうやってあなたを感じることができるでしょうか。その部分に、何らかの価値があるはずです。

メタバースが電話やビデオ会議より優れているのは、リアルに相手を感じられることだと。
シャー氏:人々がテクノロジーを使って交流する際には、必ずスクリーンなどの障壁が存在します。あくまで「技術を使って交流している」と感じるはずです。言い方を変えれば、ユーザーはウェブサイトと交流していたり、スマホのアプリと交流していたりするだけで、人間とは交流していないのです。なぜならそこに障壁があるから。私たちはその障壁を取り除く新しいテクノロジーをつくろうとしています。
具体的な価値を教えてください。
シャー氏:消費者向けの2つの例を挙げましょう。1つは顔を合わせての会話です。私には米ニューヨークに住む親友がいます。彼に電話をかければ彼の声を聞くことはできる。ビデオ通話で姿を見ることもできる。しかし、いずれも「一緒にいる」という感覚は得られません。例えば一緒にレストランに行ったり、バーで飲んだりするような体験はできない。
だから私たちは2週間に1度、VR(仮想現実)技術を使ってミニゴルフをするんです。お互いアバターの姿で。もちろん、リアルの世界と彼の姿は違います。でも、その空間に一緒にいるような感覚になるのです。
仕事の例も挙げましょう。(新型コロナウイルス禍の)2、3年で人々は実際にオフィスにいなくても仕事ができるということに気付きました。ビデオ通話をはじめとしたテクノロジーがそれを可能にしたのです。しかし依然として、同じ部屋で議論するような体験の代用にはなり得ません。どうしても何かが違う。
将来的には、業務や教育などでも、地理的に離れていても自分の好きな場所から参加できることが大きなチャンスになるでしょう。
メタはメタバースに対して、年間1兆円以上の巨額投資をしています。その効果として得られるのがミニゴルフや会議、教育などに限られるのですか? 消費者はもっと大きな価値を期待しているのでは。
シャー氏:誤解しないでください。今話した2つは交流の具体的な例を挙げただけです。
この機会に、なぜメタがこの分野をそれほど重視しているかについて説明しましょう。過去約20年間の当社の歴史を振り返ると、私たちは人々を結びつけるためのサービスをつくってきました。商業、エンターテインメント、教育、個人的な人間関係……。物理世界で起こっているあらゆることは、人々が他者と交流することに関わっています。我々がターゲットにしているのは1対1の交流だけではありません。物理世界で起こる全てをメタバースで実現したい。地理的な制約を受けずに、機会を広げていきたい。
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