「ゴールドラッシュが始まる」。米データブリックスのアリ・ゴディシCEO(最高経営責任者)はこう予言する。同社は評価額380億ドル(約5兆円)のデカコーン(企業評価額100億ドル超の未上場スタートアップ)だ。米CBインサイツの調査では、未上場企業の評価額ランクで世界8位。AI(人工知能)向けの統合データ解析プラットフォームを提供し、AIを手掛ける世界中の企業にとって不可欠な存在だ。「ChatGPTの公開以降、多くの企業からAI活用について問い合わせが相次いでいる」という。
データブリックスはAI用のデータ分析プラットフォームを提供しています。ChatGPTの流行以降、顧客企業からどんな引き合いがありますか?
アリ・ゴディシ・データブリックスCEO:米オープンAIがChatGPTを公開した2022年11月以降に起こったのは、「誰もがAIに興味を持つようになった」という現象です。我々の全ての顧客のCEOが「AIに対する戦略を持たなければならない」と言っています。あらゆる企業です。顧客企業の担当者が当社に「どう生成AIと向き合えばいいのか教えてほしい」「1カ月後にAI戦略をまとめなければならない」と尋ねています。どの業種でも、どんな規模の企業でも、誰もが生成AIに対する戦略を求めているんです。

ニーズはChatGPT以前と以後で変化しましたか?
ゴディシCEO:変わりましたね。プライバシーとセキュリティーの重要性が増したと思います。オープンソースソフトウエア(利用者の目的を問わず、プログラミングコードを使用したり修正したりできるソフトウエアの総称)で提供されていたり、サービスの一部がオープンなAIを使う場合には、この問題は極めて重要です。
例えばあなたがAIに質問する際に、非常にセンシティブな問題や機密情報を入力してしまったらどうなるのか。プライベートな自社のデータをどこまで扱っていいのか。多くの組織がこのセキュリティーの問題を気にしています。
ゴディシさんはカリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)でAIとデータ分析の研究者をされていました。専門家として、生成AIのブレークスルーをどう分析していますか。
ゴディシCEO:私たちがUCバークレーでAIを研究していた09年ごろ、AIやビッグデータは限られた研究者たちの話題であり、多くの人は関心を持っていませんでした。ただ、米グーグルは既に驚くべきことをやっていました。データを活用して、市場で勝つために将来を予測していたのです。私たちは、その方法論を民主化したいと考えました。
私たちはApache Spark(編集部注:アパッチスパーク。大量のデータに対する処理を多数のコンピューターに分散させるソフトウエア。機械学習に革命を起こしたとされ、23年時点で数千万人が利用している)を09年に開発しましたが、まだ誰も興味を示しませんでした。当時、AIとはロボットを意味していたのです。そういう時代でした。
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