世界や日本のAI(人工知能)研究やAI活用ビジネスに詳しい、松尾豊・東京大学大学院教授に、対話型AI「ChatGPT」のインパクトについて聞いた。「これまでのAIに比べて段違いのインパクトを持つ。あらゆる業界、業務で活用でき、社会を大きく変える。やるしかない」と話す。
ChatGPTの利用者は2カ月で1億人を突破するなど、世界中に衝撃が広がりました。米グーグルは「非常事態宣言」を出しており、検索エンジンの勢力図が大きく変わりそうだともいわれています。ChatGPTをはじめとする生成系AIの可能性と課題について、どう考えていますか?
松尾豊・東京大学大学院教授(以下、松尾教授):一口に生成系AIといっても、画像と言語ではコアになる技術が違います。画像生成AIよりもChatGPTなどの言語生成AIの方が社会や産業に与えるインパクトは段違いだと思います。画像は画像で面白い技術ですが、言語はほぼ全領域に関わるからです。これから、ChatGPTなどの活用によって非常に強大な変化が起こるのではないかと思います。

ChatGPTにはまだ間違いを答えたり嘘を回答したりといった、課題もあります。どう解決すればいいでしょうか?
松尾教授:課題もありますが、すぐに改善されると思います。いまは生成系AI技術の黎明(れいめい)期です。本当に大きなビジネスチャンスにあふれているので、どんどんやったらいいと思います。
強化学習の活用など、人間のフィードバックによってこれからどんどん改善していくともみられています。
松尾教授:そうですね。改善の仕方はいくらでもありますし、技術的にはもっと良くなると思います。しかも既にインパクトを与えることが分かっているわけです。
ChatGPTの完成度はどうでしょう。100に対して10とか20といったレベルでしょうか?
松尾教授:何を持って100とするのか分かりませんが、ChatGPTは世界中に広がった最初のプロダクトで、伸び代がいくらでもあります。その意味では10とか20といったところかもしれない。それでも、現状の技術水準のままでも世の中を相当変えますよ。
先ほど、画像より言語の生成系AIの方がずっと広範囲に関わるという衝撃度の点で、ChatGPTに注目すべきだとおっしゃいました。
松尾教授:ChatGPTというよりは大規模言語モデルの技術の蓄積があり、それがすごいということは2年前ぐらいから研究者はみんな知っていたのです。ただそれが、ChatGPTというサービスを通じて、一般の人たちが身をもって体験したというのがポイントです。この2~3カ月でそういう大規模言語モデルのすごさを世界中の人が知ったわけです。
1億人以上の人がChatGPTを使っているというのはすごいことで、だからこそお金も人も動くし、新しいサービスが出てきます。世の中が、そのように変わる方向に一気に動いたということです。
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