中国ネット検索最大手の百度(バイドゥ)は3月16日、独自開発の対話型AI(人工知能)を正式発表した。中国IT(情報技術)大手としては一番乗りを果たした格好。だが消費者や市場からの評価は低く、厳しいスタートを切ることになった。
「まだ不完全な部分が多いと感じている。なぜ今日なのか。それは市場から需要があるからだ」。百度の李彦宏(ロビン・リー)董事長兼CEO(最高経営責任者)は、3月16日に独自開発の対話型AI「ERNIE Bot(文心一言)」を正式発表した理由をこう説明した。

百度は、2019年に大量のテキストデータをAIに与えて学習させる大規模言語モデルを発表し、開発を継続してきた。米オープンAIの対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」の世界的なヒットを受け、百度も2月7日に同分野への参入を表明。今回の正式発表で、中国のIT大手としては一番乗りを果たしたことになる。2月に市場参入を明らかにして以降、すでに650社を超える企業との提携が明らかになっている。李CEOは「今回のERNIE Botは過去数年間の努力を引き継いだ結果だ」と話す。
会見で李CEOがERNIE Botの特徴として挙げたのは(1)文章創作、(2)ビジネス文書作成、(3)数学の推論、(4)中国語の理解、(5)マルチモーダル(複数手段な)生成の5つ。それぞれの特徴に対して、実際のERNIE Botの画面を表示しながらデモを披露した。
例えば(2)のビジネス文書作成では、「中小企業のデジタル化に貢献する技術サービス会社を設立したい場合、どのような社名をつけることができるか」という質問から社名の候補を挙げて、企業の設立に関するプレスリリースを600文字と限定する中で作成するデモを披露。(3)数学の推論では、1つの頭に2つの足を持つニワトリと、1つの頭と4つの足を持つウサギを同じケージに入れた際に9つの頭と30の足がある場合、ニワトリとウサギはそれぞれ何羽いるかを、計算式を示しながら回答するデモを見せた。

李CEOは(4)の中国語の理解について「中国市場に根ざした大型言語モデルとして、最も高度な自然言語処理能力を持っている」と胸を張った。一方で、英語対応に関しては「学習が不十分で十分なパフォーマンスを発揮できない。能力を向上させていく必要がある」と語るにとどまった。
オンライン視聴は2万人超も、広がる失望
やや不完全ながらも、対話型AIの正式発表を優先させた格好の百度。会見はリアルに加えてオンラインでも開催されたが、オンライン会見では平日の昼間にも関わらず2万人以上が視聴するなど、中国国内での注目度の高さを印象付けた。
一方で、今回の正式発表のタイミングで少なからず失望の声が上がったのも事実だ。
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