(前回から読む→「ソニーのミラーレス、ついに“真打ち”登場」)

※石塚茂樹さんは2023年3月末でソニーグループを退社されました

2015年8月に「欠点がない」フルサイズミラーレス「α7R II」が出て、17年5月にプロユースのデジタル一眼レフ最上位機種と正面から勝負できる「α9」が出て、そして、「A1プロジェクト」で「フルサイズのレンズ交換式カメラでナンバーワン」を公約した5年目、2018年がやってきます。

石塚:15年からじわじわ、じわじわとシェアが上がっていって、17年には国や地域によってはトップシェアになっています。ドイツとか、中国とか。そしてα9でまた一段技術を引き上げて、それを高解像度版に展開した「α7R III」(17年11月)、ベーシック機「α7 III」(18年3月)を出しました。

α7 III(2018年3月)+ FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS ソニーのフルサイズミラーレスのベーシック機3代目として登場。これまで積み重ねてきたAFをはじめとする性能向上、使いやすさへの配慮、隙がなくバランスの取れた性能を持ちながら戦略的な価格で発売され、ユーザーが一気に拡大した(製品画像提供・ソニーグループ、以下同)
α7 III(2018年3月)+ FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS ソニーのフルサイズミラーレスのベーシック機3代目として登場。これまで積み重ねてきたAFをはじめとする性能向上、使いやすさへの配慮、隙がなくバランスの取れた性能を持ちながら戦略的な価格で発売され、ユーザーが一気に拡大した(製品画像提供・ソニーグループ、以下同)

α7 IIIは売れましたよね。

石塚:シェアの拡大に一番貢献したのがα7 IIIですね。

 21年12月に後継機のαIVが出ましたが、α7 IIIは今でも販売しているロングセラーです(23年3月現在)。2420万画素で693点の像面位相差AF(社内呼称ZAF)搭載のイメージセンサー、しかも暗所に強い裏面照射型、秒10コマの連写性能と、個人的には正直いって、もうこれで何も困らないじゃないか? と思えたカメラです。

確かに。ついに693点まで来て、コントラストAFのエリアよりZAFの配置エリアが広くなってしまった。

α7 IIIのAFエリア。α7や、前回のα7 RIIと比較してみると、ZAFの配置エリアが拡大、密度も高くなっていることが分かる
α7 IIIのAFエリア。α7や、前回のα7 RIIと比較してみると、ZAFの配置エリアが拡大、密度も高くなっていることが分かる

ついにαはナンバーワンを達成

石塚:値段もちょっと踏み込みました。まあまあのお値段で機能的に不足がないので大ヒットしたんですよ。これでがーっとシェアが伸びて。

はい、伸びて。

石塚:2013年に始めた「A1プロジェクト(アルファ・ナンバーワン・プロジェクト)」が、2014年、2015年、2016年、2017年ときて、2018年、5年目のときに……。

まさに宣言した5年目。

石塚:これでグローバルシェアナンバーワンを、一応内部カウントですが達成しました。フルサイズに限りですけれども、金額も、たぶん台数もトップシェア。18年5月に「αカメラシステムの開発・商品化とビジネス貢献」で、社内表彰の「井深賞」という、めったに取れない賞をいただきました。そして「α9」がソニー技術大賞 特別賞を受賞しています。

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