(前回から読む→「ソニー逆転への布石、レンズもAFもじわじわ進化」)
※石塚茂樹さんは2023年3月末でソニーを退社されました
“真打ち”は像面位相差AFセンサー(社内呼称ZAF)を搭載した、フルサイズのイメージセンサーのことですね。これがなぜ真打ちとまで呼ばれるのでしょうか。
これができればデジタル一眼レフに勝てる
石塚:改めての説明になりますけど、デジタル一眼レフは専用の位相差AFセンサーにミラー(レフ)を使って光(被写体の映像)を当てて、シャッターを切る直前までピント合わせし続けることができますよね。だから、高速で動くものにもオートフォーカスが決まる。
一方、ミラーレスにはミラーがないから、その分小型軽量化できるわけですが、光をイメージセンサーとAFセンサーに分けることができない。
石塚:専用のAFセンサーを付けられませんので、イメージセンサーの信号からコントラストを分析してピントを合わせていました。このやり方は、まずイメージセンサーから読み出し、コントラストが高いところを探すためにレンズを動かし、と、時間がかかるので、ピント合わせが遅い。だからスポーツ写真など高速で動く被写体の撮影には向いていない。
「だったら、イメージセンサーに位相差AFセンサーを組み込めばいいじゃないか」というわけで、長年開発を進めてきたわけです。これがZAFで、技術的には他社さんもやっていたし、我々も遡れば12年の「α99」から搭載していた。でも、なかなか満足のいくAF速度まではいかなかった。
転機は前回でお話しした14年3月発売の「α6000」ですね。APS‐Cサイズ用ですが、ほぼイメージセンサー全面に位相差AFセンサーを配置(179点)して、世界最速の高速AFを謳(うた)いました。「ミラーレスもやるね」と思わせた機種だと思います。
とはいえ、イメージセンサーのサイズはまだAPS‐Cだった。
石塚:そう。「フルサイズの全面に位相差AFセンサーを組み込んで、それを制御しきるようなシステムをつくる」。これができたら、「A1プロジェクト(アルファ・ナンバーワン・プロジェクト、レンズ交換式カメラで首位を獲る計画)」は成功する。というのが僕らの見立てで、そのイメージセンサーを“真打ち”と呼んでいたんです。
APS‐Cまでは14年に市販化できたんだけれども、これをフルサイズに持っていくのにもうワンステップが必要になって、翌年までかかりました。
そしてついに完成した“真打ち”が登場して、「α7R II」に搭載 されるわけですね。
広範囲、高密度のAFセンサー、そして裏面照射型
石塚:そう、我々が納得のいく性能を持ったZAF、それを搭載したフルサイズのイメージセンサーです。センサーの測距点は399まで増え、視野のほぼ全面をカバーしています。デジタル一眼レフの強みは別体の専用AFセンサーと申し上げましたが、あれは構造上、画面の中央部のみに対応するんですよね。こちらはイメージセンサーに位相差AFセンサーを載せているから、被写体が画面の端に行っちゃっても、フォーカスできるんです。
センサーの密度と範囲が一気に上がりましたね。しかもこのイメージセンサーは、実に4240万画素の高解像度。先代の「α7R」が搭載していた高画素タイプのイメージセンサーが3640万画素でしたから、2割近く増えている。
石塚:そうですね、画素数、AFセンサー、両方一気に増やしました。

イメージセンサーの名前がこれまでの「Exmor」から「Exmor R」に変わったのは、この変化があったからですか?
石塚:いや、名称に「R」が入ったのは「裏面照射型」のCMOSセンサーだからです。フルサイズの裏面照射型CMOSセンサー搭載は、文字通りα7R IIが世界初です。
裏面照射型? また新しい言葉が出てきました。
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