(前回から読む→「ソニー、念願のデジタル一眼レフ参入! でも市場は厳しい反応」)
コンパクトデジカメの「サイバーショット」は好調ながら、市場の拡大を上回るまでの勢いはなかった。差別化、高付加価値化の切り札として、コニカミノルタの一眼レフ事業を継承して出したレンズ交換式カメラ「α」シリーズも高い評価を得ることはできず、ビジネス的にも苦しい時期が続く。そんなソニーのデジカメ部門に戻ってきた石塚さんは、「やっぱりソニーの真価は“小型軽量”だ。レンズ交換式カメラの高付加価値化にもそれが必要なのでは」と原点回帰することにした、と。

マイクロフォーサーズから来た誘い
ソニーグループ 副会長・石塚茂樹さん(以下、石塚):そして2007年ごろに、マイクロフォーサーズ陣営から「ファミリーに入りませんか」と打診がありました。
マイクロフォーサーズはパナソニックとオリンパス(現OMシステム)が組んで、ミラーを廃したミラーレス方式によるレンズ交換式カメラの小型化を図った規格ですね。ということは、小型軽量という狙いどころは石塚さんと同じじゃないですか。
石塚:そう。
(レンズ交換式デジタルカメラには、ペンタプリズムとミラーを持つ「デジタル一眼レフ」と、それを持たない小型軽量の「ミラーレス(ミラーレス一眼)」がある。詳しくは前回の解説「ソニー、念願のデジタル一眼レフ参入! でも市場は厳しい反応」を)
どうされたんでしょうか。現実にはソニーからはマイクロフォーサーズのカメラは出なかったわけですから、やっぱり断っちゃったわけですよね。
石塚:その通りですが、すぐに断ったわけではないですよ。僕らも「レンズ交換式カメラの小型化をどうやって実現しよう」という議論をしていたので、当然、(マイクロフォーサーズも)選択肢に入れておきたかった。
「マイクロフォーサーズ」とは
マイクロフォーサーズは、4/3型=3分の4インチ(17.4×13.0ミリ)のイメージセンサーを使用するミラーレスタイプのデジタルカメラの規格。規格名はこの「4/3」に由来する。ただでさえデジタル一眼レフより小型軽量化が可能なミラーレスで撮像素子が小さくなれば、レンズもカメラ本体もさらに小さく、軽くできる。
この規格を採用したオリンパス(現OMシステム)とパナソニックのミラーレスはボディ、レンズに互換性が生まれ、「オリンパスのカメラにパナソニックのレンズ」といった組み合わせが可能になる。他社と市場を共有することになるが、レンズ資産を一気に増やせるメリットもある。
当時のレンズ交換式カメラの撮像素子の大きさは、当時のαシリーズも採用していた「APS-C」が主流で23.5×15.6ミリ。プロ、ハイアマチュア向けとされた「フルサイズ」は36.0×24.0ミリと、マイクロフォーサーズの4倍だ。サイズが大きいほど高い画質が期待できる。レンズ交換ができないコンパクトデジカメは大きくて1インチ(13.2×8.8ミリ)。マイクロフォーサーズ規格のカメラは、フルサイズ、APS-Cのデジタル一眼レフよりも小さくて軽く、かつ、コンデジではできないレンズ交換や高画質を狙った規格と言える。(サイズはメーカーによって細かく異なる)
※マイクロフォーサーズのサイト→こちら
実は私もマイクロフォーサーズ規格のミラーレス、オリンパスの「OM-D E-M10」を長いこと愛用していました。めちゃめちゃ小さくて軽いし、写りも決して悪くない。安いし。バランスのいいカメラでした。娘にあげちゃいましたが喜んで使ってますね。
石塚:ですので、マイクロフォーサーズも一緒にまな板に上げて、ソニーのレンズ交換式カメラの小型化路線をどうするか、考えていました。
石塚さんはマイクロフォーサーズという規格をどう見ていましたか。
石塚:レンズ交換式ならではの、画質やレンズのボケなどの特徴を維持しながら、小型化を実現できる、バランスの取れたフォーマットだと思っていましたね。一方で、画質や性能を突き詰めていくなら別の選択肢がある、とも。
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