石塚:設計にこれだけかかるよね、と積み上げて出したスケジュールじゃなくて、ボーナス商戦期前に合わせる“ビジネスの必然性”から決めたことでした。これもソニーの伝統芸的な、DNAに入っている雰囲気づくりですね。

雑誌の編集部でもそういう乗せ方がうまい編集長がいましたよ。ふと気が付くといつの間にかめちゃめちゃ働いているぞ、俺、という。

石塚:あ、そうだ、思い出した。モックアップをデザイナーが持ってきたのは、本当に社長との会議の数日前だったんですよね。そうだ、クリスマスイブだった。

 社長にプレゼンした後に品川の店で飲みながら「これはいけるよな」と改めて思って、新大阪で飲んでいた設計部長のUさん、そして例のαを引っぱってきたKさんの携帯に電話しました。「あのさ、先日見せたあれ、あれどう思う? あれでやっちゃっていいかな」と言ったら、Kさんが「いいっすよ、というか石塚さん、もう言っちゃったんでしょ」と。

お見通しで(笑)。というか、Kさんもやりたかったんでしょうね。

石塚:「そう、社長に言っちゃった」と(笑)。部下には事後承諾というか、「もう言っちゃったからやろうよ」という感じで。事業目標も決めてね。

なし崩し的に雰囲気が盛り上がっていくという。

「よっしゃ、男気でやってやる」

石塚:そうすると、デザイナーがもっとカッコいいデザイン画とかスケッチ、もっときれいなモックアップを作って持ってきてくれる。みんなも、「おおーっ」という感じになって、「本当に部品が入るかどうか分からないけど、やりましょうよ、何とかしましょう」と盛り上がってくれた。

そうでしょうね。「これができたら売れるよ」と思えるものに対して頑張るって、かみ合った気分になるというか、やる気も出ますよね。

石塚:09年の3月までかけてコンセプトを固めて、担当する部署をつくり、4月に設計が始まったと思います。このプロジェクトのためにサイバーショットの設計部長をプロジェクトリーダーに引っぱってきました。

 このカメラのキモは撮像素子、イメージセンサーだと思っていたので、T1のところで出てきたセンサーの事業責任者で口の悪い先輩、Sさんというんですけれど、「Sさん、CMOSセンサーで、画素数はこれこれで、フルHD動画が記録できるイメージセンサーを、発売に間に合うように開発してくれないか」と頼み込んで「よっしゃ、男気でやってやる」と快諾してもらいました。

 そして担当者をアサインして、商品のカタログやマニュアル、キャッチコピーを先にラフなもので用意しておいて、「これで行ってくれ!」と。

なるほど、それで?

石塚:そうしたら、何の因果なのかその直後にまた僕は異動になりました(笑)。NEXが発売になったとき、僕はデバイス事業担当で、バッテリーを他のメーカーさんに売り込んでいました。

えーっ?!

(つづきます)

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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

 米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。

 3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。

 4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。

 各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。

■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江

■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

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