そして最終的にソニーはマイクロフォーサーズ陣営に入らなかった。どういう経緯があったのでしょうか。
石塚:忘れもしません、08年の秋でした。今後3年間の中期計画のブレインストーミングを部内でやりまして。当然、ソニーのレンズ交換式カメラの小型化、イコール、ミラーレス化をやっぱりやらなきゃいけないだろうと。
そのときのフォーマットというか、どういうシステムにすべきか。その1としては、「マイクロフォーサーズをそのまま受け入れましょう」と。その2として、「αの資産とブランドを維持しつつミラーレスに移行して、ミニチュアライズしたのをやりましょう」と。他にもいくつか案があったけれど、現実味があったのはこの2つでした。
「αの資産を維持」というのは、新しいミラーレスのカメラでも「Aマウント」、つまりこの時点で持っている一眼レフのαのレンズが使えるようにする、ということですよね。
石塚:そうです。変な話ですが、僕はVTR出身なので、ベータマックスの失敗という苦い経験がある。まあ、ファミリー参入、フォーマット統一ということについてはいろいろ悩むんです。いろいろ激論がありました。フルサイズのイメージセンサー対応のαと、APS-Cのミラーレスで、αのレンズ(Aマウントのレンズ)を共用しようというのは、VHS陣営がビデオカメラをつくるときに、VHS-Cという互換性のある小型カセット規格をつくったのと少し似ている……かもしれませんね。
Aマウントの資産を生かす
当時のαシリーズは、イメージセンサーはAPS-Cとフルサイズの2本立てでしたっけ。
石塚:そうです。そしてイメージセンサーの大きさが同じであれば、フランジバック(マウント面からイメージセンサーまでの距離)や、レンズと本体の接点の問題はアダプターを用意することで解決できる。
だったら、マイクロフォーサーズに比べてAPS-Cのほうが画質的には有利でしょうし、Aマウントのレンズ資産も生かせるし、オリジナルで新しくミラーレスをつくりたい、ということになった。
石塚:そう。それで08年末の時点では、まずは「Aマウントのレンズの互換性がある、APS-C搭載のミラーレス」というところまでは決まっていた。だけど、資産が引き継げるのはいいけれど、それで他社と差異化できるくらい、小さくて軽くて魅力的なカメラになるかどうか、という問題があるわけですよ。
そうか。単なる小型化なら撮像素子が小さいマイクロフォーサーズのほうが有利だし、競争で勝てるのか、と。
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