糸口は故・小田嶋隆さんと“スシ”でした
2022年秋、石塚さんが故・小田嶋隆さんのコラムを惜しむメッセージを編集部にくださったのをご縁に、インタビューする機会をいただいた(「小田嶋さんが書いていた『ソニーへの手紙』」)。
石塚さんはソニーのデジカメ部門を長年率いてきた方、という予備知識はあったので、話のネタにと思って仕込んできた自分のデジカメを、インタビューの終わりに出してみた。
「実はこんなものを持っているんですが」
「おっ、“スシ”じゃねえか!」
「スシ? スシってあの寿司ですか?」
「そうそう。当時(2002年発売)、欧州に持っていったら、このホワイトのモデルがちょうどシャリに見えるっていうんで、現地の人が『スシ、スシ』って喜んでね」
「じゃあひとつ、板前風の写真を撮らせて頂いてもいいでしょうか」
「こんな感じ? へい、お待ち!」
石塚さんの意外なノリの良さにびっくりしつつ、脳内ではとっくに枯れたと思っていた「ソニーファン」心と好奇心がシンクロし始めた。小田嶋さんのコラムを面白がる心の余裕、節度を持ちつつも歯切れのいい物言い。この人ならきっと……。「よろしかったら、石塚さんを通して、ソニーのデジタルカメラのこれまでの歴史を振り返る企画をやらせてもらえませんでしょうか」。気が付いたら口説き初めていたのだった。
以上が本連載開始の経緯。ソニーの「ものづくり」の牙城として高い利益を稼ぎ出しているデジタルカメラの来し方を、開発の最前線に立ち続けた技術者、そしてスマホ来襲の中でデジカメを生き残らせた経営者でもある石塚さんに、根掘り葉掘り伺っていく。その中から、日本のメーカー、そして日本の技術者が、再び輝く手がかりを掘り出せたらと祈っている。ホンネを申せば、すごく面白そうではないですか!