世界のトレンドに逆行し、農薬の残留基準をどんどん緩めてきた日本。やっと「みどりの食料システム戦略」を打ち出して環境配慮型を目指し始めたが、ここにきて新たなハードルも見えてきた。欧州連合(EU)によるルール策定が、日本の食品輸出にも影響しかねない。

 日本は農林水産物・食品の輸出で「2030年に5兆円」を目指している。その目標達成に向けて、EUで持ち上がる新たな枠組みにも対応しないといけない。足元では欧州の環境団体などが、その導入を求めている。欧州委員会が22年6月に公表した、「30年までに化学農薬の使用を半減させる」という規制案だ。

 生産効率の低下を懸念した東欧諸国などの反対でスタート時期は宙に浮いているが、いずれは農家への補助策とセットで導入されるとの観測がある。ひとまず域内への規制であっても、結局は域外にも影響させるのがEUの得意技だ。

 農薬利用をストップさせる機運が、欧州ではここ数年で高まっている。ドイツのショルツ政権は21年、発がん性の有無について大論争となっているグリホサート系の除草剤(ラウンドアップなど)を段階的に利用禁止にすると決めた。

 フランスのマクロン大統領もかねて、「フランス国内で代替手段ができたらすぐにグリホサートを禁止すべきだ」と発言してきた。このほかミツバチの帰巣本能を狂わせて生態系に影響を与えるといわれる、ネオニコチノイド系の農薬にも環境団体の圧力が強い。

日本からの食品輸出にハードル

 日本総合研究所の三輪泰史エクスパートは「EUは世界で最も厳しい農産物の基準を実現しようとしているが、WTO(世界貿易機関)ルールに反しない形で非関税障壁として機能させることもうまい」とみる。過去には遺伝子組み換え食品についてEUがいち早く条件を設定した。

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