今日、経済は国の安全保障の柱として見なされ、世界的にルールの数が増加している。外国政府による規制は現地法人に限らず、日本国内における日本企業の活動にまで影響を及ぼす。この「域外適用」に細心の注意を払う必要がある。

(写真:Shutterstock)
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日本企業、続々と専門部署

 「従来の輸出管理なら日本の外為法に基づくコンプライアンス(法令順守)だけだった。現在は米国の規制がどう自らのビジネスに影響するか精査し、いかに対応するかまで視野を広げなければならなくなった」――。三菱電機の日下部聡常務執行役は、そう語る。

三菱電機の日下部常務執行役は、日本企業が国際的な対応力を高めるべきだと強調。「米中欧はそれぞれ、国・地域のイニシアチブが対立構造となり、複数のルールがどんどん生まれる時代になる」と予測する。
三菱電機の日下部常務執行役は、日本企業が国際的な対応力を高めるべきだと強調。「米中欧はそれぞれ、国・地域のイニシアチブが対立構造となり、複数のルールがどんどん生まれる時代になる」と予測する。

 三菱電機は3年前、社内を横断してリスク管理するために「経済安全保障統括室」を設けた。海外のルール形成や外国政府の方針により、日本企業の活動を縛るケースが増えているからだ。例えば米国が毎年の国防予算を定める国防権限法(NDAA)は、日本のハイテク業界も見過ごせない。

 NDAAはPDFファイルで閲覧すると4000ページ超という膨大な文量となる。しかも「一見しても具体的にどうビジネスに影響するか分かりづらいため、読み解くための専門的なチームが必要となる」(日下部常務)。欧州や中国の動きも含め、企業活動に関わる規制方針を洗い出すべく、こうした部署を設ける動きが各社に広がっている。

「域外適用」の威力

 日本企業が注意しないといけない代表例は、外国政府が設けたルールの「域外適用」という概念だ。例えば米国による輸出規制が、日本の港からの輸出にまで影響力を持つのだ。具体的には米国の技術やソフトウエアなどを組み込んだ製品について、米国が指定する禁輸先に輸出させないようにしている。

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