日米経済協議会の会長も務めるNTTの澤田純会長は、経済安全保障への対応を各社が進めなければならないと危機感を募らせている。大国同士の規制は、先端技術を対象とするものが増えてきた。同氏は通信や半導体分野の変革を目指しており、地政学リスクに目を凝らしている。

 「同盟国と開発していくのが重要なポイントだ」。NTTの澤田会長がこう語るのは、同社が研究中の光通信による新たな情報インフラ「IOWN(アイオン)」構想について。日本が先端技術で巻き返す一手として、澤田氏が社長時代にぶち上げた。この事例からは企業としてテクノロジーで再興を図る戦略と、国レベルでの経済安保が切っても切り離せない様子がうかがえる。

澤田純(さわだ・じゅん)
澤田純(さわだ・じゅん)
大阪府出身、1978年京都大学工学部卒、日本電信電話公社(現NTT)入社。2008年NTTコミュニケーションズ取締役、12年副社長。14年NTT副社長、18年社長就任。IOWN構想を公表し、NTTドコモの完全子会社化も手がけた。22年6月から代表権のある会長に。日米経済協議会の会長(21年12月~)も務めている。(写真=的野弘路、以下同じ)

 日本の通信業界を見渡すと「いつからかiPhone(アイフォーン)を各社が売るばかりで、通信サービスについて質的な差別化が少なくなった」と、澤田氏にはじくじたる思いがある。腰の重い印象の付いてしまった日本の大企業から、再び国際的なイノベーションを生み出せないか。

 情報処理のゲームチェンジャーを狙うIOWN構想は、電力消費を効率化して省エネに寄与するだけではない。光ファイバー1本あたりの伝送容量を従来の125倍に高め、通信の遅延は200分の1に縮められる。まずこうした情報の通信網を高速化しつつ、コンピューター内の回路でも電気ではなく光でつなぐ領域を増やして処理性能を高めていく。

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