警察庁は1月19日、改正道路交通法の施行を7月1日に予定していると発表した。改正道交法では電動キックボードを想定して特定小型原動機付自転車という新たな区分ができる。しかし、電動キックボードを巡るルールづくりの動きが出てきたのはほんの数年前。先駆者であるLuup(ループ、東京・千代田)は、どのような手法で規制の壁を乗り越えてきたのだろうか。

改正道路交通法で特定小型原動機付自転車という新たな区分に定義された電動キックボード(写真:AFP/アフロ)
改正道路交通法で特定小型原動機付自転車という新たな区分に定義された電動キックボード(写真:AFP/アフロ)

 改正道路交通法では電動キックボードを特定小型原動機付自転車という新たな区分に定義した。車体は時速20㎞を超える速度が出せないことが条件になる。16歳以上であれば乗ることができ、運転免許は不要だ。ヘルメットの着用については努力義務だが、義務ではないため任意になる。

 今後ますます普及が予想される電動キックボード。数年前までほとんど見かけなかったが、今では新たな移動手段として期待され、公道を疾走する利用者の姿を目にする機会も珍しくなくなった。その普及を目指し、新しいルールの導入に取り組んだのがLuup(ループ、東京・千代田)だ。

 同社の岡井大輝社長兼CEO(最高経営責任者)は大学を卒業後、コンサルティングファームを経て2018年にLuupを起業する。当初はスポットで介護人材を派遣するサービスを模索していたという。これは事業化には至らなかったものの、検討の過程で重要な気付きを得る。日本の交通インフラの不便さだ。

業界をまとめ、実証実験を効率化

 「電動で1人乗りの小型モビリティーが必要ではないか」。そこで複数のモビリティーを検討し、岡井氏が選んだのが電動キックボードだった。早速、経済産業省や警察庁など関係省庁に環境整備を働きかけていく。

 電動キックボードとは何か、言葉を尽くして説明した。だが手応えは薄かった。新しい乗り物ゆえに利便性や将来性をイメージしづらく、「『ふーん、そんな乗り物もあるんだ』『危なくないの?』という程度」(岡井氏)の反応しか返ってこないのだ。

 そこから岡井氏は2年余りで公道での実証実験を実現させ、22年4月には道路交通法の改正で電動キックボード向けに「特定小型原動機付自転車」という新たな区分を盛り込むところまでこぎ着けている。

 公道の“異物”とも捉えられていた電動キックボードの法整備はなぜこうも早く進んだのか。ポイントは2つある。まず1つは地方自治体を積極的に巻き込んでいったことだ。

 19年4月、Luupは浜松市や奈良市など5つの自治体と実証実験を含む連携協定を締結した。地方の一部地域では、人口減少や高齢化を背景に、近距離の移動手段が乏しくなっている。「課題を解決してくれるなら」と協力には積極的だった。

 これを機に「関係省庁も規制の整備について前向きに考えてくれるようになった」と岡井氏は振り返る。地方が抱える深刻な課題に対し、具体的な解決策を示すことができたからだ。電動キックボードが実際に何の役に立つのか、漠としたイメージが形を帯び、議論の余地が生まれた。

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