経済安全保障に基づく企業活動への規制や産業政策が各国で台頭し始めた。日本はいかなる方向に進むのか。自民党の前幹事長で経済安全保障推進本部の本部長を務める甘利明衆院議員に聞いた。
![[あまり・あきら]1972年慶応義塾大学法学部卒、ソニー(現ソニーグループ)入社。83年衆院議員初当選。労働相、経産相、行革担当相を歴任。経済財政・再生相として環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を巡り、海外の閣僚らと激論を交わした。自民党税調会長、幹事長を務め、経済安全保障推進本部本部長。(写真=的野弘路、以下同じ)](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/gen/19/00532/012500002/p1.jpg?__scale=w:500,h:333&_sh=06c0890e20)
なぜ安全保障の中に、経済も含まれるようになったのでしょうか。
甘利明衆院議員(以下、甘利氏):国家の責務というのは、独立を確保して国民の生命、財産を守るということです。従来の発想だと、そういった措置はいわゆるフィジカルな安全保障が担当してきました。ところが国民の生命、財産、そして国家の独立を守ることに経済が直接または間接的に関わらざるを得ない時代になってきた。つまり経済が攻める武器にもなれば、守らなければならない安全保障上のウイークポイント、チョークポイント(脆弱性)にもなりかねないということが、具体的事実として徐々に見えてきました。
顕著な例は、国民、国家の安全保障には本来直結しないはずのコモディティーとしての医療用製品ですね。マスク、手袋、医療用のガウンなどは供給が途絶えると医療崩壊になってしまいます。昔から重要と考えられてきた医薬品、ワクチンなどとは異なる普通の品目でも、大変な事態になると(新型コロナウイルスの流行によって)実感しました。
国民の生活や国家の運営に関わっている品物のサプライチェーン(供給網)を確認すると、意外なところにチョークポイントがあると発見できます。従来なら機微な技術の取り扱いや研究開発などは国家に関わる一方、コモディティーは民間に任せておけばいいとの考え方もあったと思います。もちろん民間に任せるのですが、供給上のリスクについて対処法を用意しておく必要があるのです。
そこでサプライチェーンを洗い出し、例えばリスクのある国への依存、あるいは1つの国にほとんど依存している構造が見えてくるとします。そこの国で悪意がなくとも何かの事故で供給が止まったら、こちらにも影響が出ると分かるわけですね。
そのような可視化されたチョークポイントを克服する必要があります。サプライチェーンをもっと多元化するとか、少なくとも政治的リスクがあるところには依存しないとか、あるいはある程度は自国内で供給ができるようにするとか。もしくは備蓄をしっかり整えるといった施策です。
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