物流業界では話題だが、一般企業では認知度が低い「2024年問題」。2024年4月にトラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、荷物を運びきれなくなる懸念が広がっている。連載2回目は、IT企業のラクスルと共同出資会社ハコベル(東京・品川)を立ち上げたセイノーホールディングス(HD)。スタートアップなどとの協業で荷物を運びきろうとしている。
■この連載ここまで
・物流危機「2024年問題」、AIで救えるか OKIの挑戦
設立から10年あまりのIT(情報技術)企業と、創業90年の物流企業が手を組む──。異色の組み合わせで2022年8月に発足したのがハコベルだ。社名と同じ「ハコベル」という、荷主と運送会社をつなぐ運送マッチングサービスを展開している。
15年12月にハコベルのサービスを立ち上げたのは、09年に印刷のシェアリングサービス「ラクスル」で創業したラクスルだ。小規模な事業者が多く、多重下請け構造が顕著で、デジタル化が進んでいない──。印刷業界と並んで非効率だと映ったのが物流業界だった。荷物を運んでほしい企業と、荷物を運びたい中小の運送事業者をデジタルプラットフォーム上でマッチングさせる。印刷業界でのラクスルと全く同じ手法が、物流業界にも横展開できると踏んだ。
確かに、加入したいという運送事業者は少なくなかった。22年7月末時点で、登録事業者数は約1万3000社、一般貨物(通常のトラック)約2万3000台、軽貨物(軽トラック)約1万5000台が登録されている。「荷主と直接つながった結果、一般貨物の事業者で稼働率が1.5倍になったケースがある」とハコベルの狭間健志代表取締役社長CEO(最高経営責任者)は胸を張る。

一方、サービスを利用する荷主の開拓は、ラクスルほど容易ではなかった。20年8月~21年7月の利用顧客数は5373社あったが、21年8月~22年7月は3836社と3割近く減った。小口顧客よりも大口顧客を優先したためで、売り上げ自体は前年同期比18.5%の成長を続けてはいる。とはいえ、22年7月期で約35億円と、16兆円規模の物流業界では微々たる存在にとどまり、セグメント利益(EBITDA)も赤字が続いている。
狭間氏は「1回使えば満足してもらえるのだが、既存の取引先から切り替えてもらうのはすごく大変」とこぼす。気軽に試せる印刷とは異なり、輸送は失敗が許されない。見ず知らずの運送事業者に依頼するのはハードルが高い。
そこで頼ったのが、物流大手の一角を占めるセイノーHDだった。
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