物流業界では話題だが、一般企業では認知度が低い「2024年問題」。24年4月にトラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、荷物を運びきれなくなる懸念が広がっている。宅配だけでなくより上流の企業間物流にも影響を与えかねず、どの企業も無縁とはいえない問題だ。現場ではDX(デジタルトランスフォーメーション)による業務の効率化が待ったなし。1回目は、中堅運送会社とともに「コスト最小型ルート配送最適化AI(人工知能)」を開発したOKIを取り上げる。

 6年前の2017年に起きた「宅配クライシス」。業界最大手のヤマト運輸で残業代の未払い問題が表面化し、宅配便の総量規制や料金値上げに踏み切らざるを得なくなった。EC(電子商取引)の増加に対してドライバーなど十分な人員を確保できなくなったためだ。

 実は今、それを上回る危機が忍び寄っている。24年4月から、トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されるのだ。一般的な企業の上限720時間よりも緩いとはいえ、これまで残業規制がなかった物流の現場は対応に追われている。

 全日本トラック協会の21年10月時点の調査では、会員企業の約3割が「時間外労働時間960時間超のドライバーがいる」と回答。長距離ドライバーに限ると、その割合は5割近くに達している。「現状の人員のままで時間外労働時間が制限されると荷物は運びきれない」という悲鳴が物流業界から上がり、「2024年問題」と呼ばれている。

 では一体、どの程度ドライバーが不足するのだろうか。ボストン・コンサルティング・グループの試算では、宅配個数の増加や働き方改革による要員増により、27年には約96万人のトラックドライバーが必要になるという。しかし実際には少子高齢化やトラックドライバーを敬遠する動きにより、働き手は72万人にとどまると予想している。差し引き24万人の不足となる。

 これは17年の宅配クライシスを大きくしのぐ大問題といえる。なぜなら、宅配クライシスは最終消費者に荷物を届けるラストワンマイルの配送能力不足だったのに対し、2024年問題は全ての物流に及ぶからだ。ラストワンマイル物流の市場規模は2~3兆円とされるが、物流業界全体の市場規模は約16兆円もある。その全てにおいて、「物流クライシス」が起こりかねない。

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